学校現場のDX化が叫ばれる中、教員の負担軽減に特化したプラットフォームで急成長を遂げる株式会社クラスアシスト。元教員の代表が語る、教育テクノロジーの「本当に必要な形」とは。
教員経験が生んだ「現場ファースト」のEdTech
編集部
まず、クラスアシストを創業されたきっかけをお聞かせください。
藤原CEO
私自身、公立中学校で7年間教員として働いていた経験があります。生徒たちと向き合う時間は本当にやりがいがあったのですが、一方で事務作業や保護者対応、各種報告書の作成など、授業準備以外の業務に追われる日々でした。夜9時、10時まで学校に残るのは当たり前。持ち帰り仕事も多く、「このままでは良い教育はできない」と強く感じたんです。その後、教育系NPOを経て、2019年にクラスアシストを立ち上げました。テクノロジーの力で教員の働き方を変え、子どもたちと向き合う時間を増やしたい。それが創業の原点です。
編集部
具体的にどのようなサービスを提供されているのでしょうか。
藤原CEO
主力プロダクトは「ClassAssist Pro」という学校業務統合プラットフォームです。出欠管理、成績処理、保護者連絡、学校便り作成、時間割管理など、教員が日常的に行う業務を一元化しています。特徴的なのは、文科省や各教育委員会のフォーマットに完全対応していることと、既存の校務支援システムとAPI連携できる点です。多くのEdTechサービスが「新しいツールを使ってください」というアプローチなのに対し、私たちは「今ある環境にシームレスに統合される」ことを重視しています。
編集部
現場の先生方の反応はいかがですか。
藤原CEO
導入校からは「週に8〜10時間は業務時間が削減できた」という声を多数いただいています。ある先生からは「金曜日の夕方に余裕ができて、週末に向けて気持ちよく授業を終えられるようになった」と。数字以上に、そうした精神的なゆとりが生まれることが大きいですね。現在、全国約450校の小中高校で導入いただいており、利用教員数は約1万2000名に達しています。
テクノロジーは教育を置き換えるものではなく、先生方が本来の仕事に集中できる環境を作るためのもの
── 藤原CEO
学校現場への導入、最大の壁とその突破法
編集部
EdTech企業が学校への導入で苦労する点をよく聞きますが、御社はどう対応されていますか。
藤原CEO
おっしゃる通り、学校現場へのIT導入には独特の難しさがあります。予算サイクルの問題、意思決定の複雑さ、ICTリテラシーの格差など。私たちが重視しているのは、まず「小さく始められる」こと。初期費用を抑え、1つの学年や教科から試験導入できる料金体系にしています。月額制で1教員あたり980円から始められ、効果を実感してから全校展開していただけます。
編集部
現場の先生方のITスキルにばらつきがある中で、使いこなしてもらうための工夫は。
藤原CEO
これは最重要課題ですね。私たちは「72時間ルール」を設けています。導入から72時間以内に、必ず担当カスタマーサクセスが訪問またはオンラインでフォローアップする体制です。最初のつまずきを見逃さないこと。また、UIは教員の方々にモニターになっていただき、「スマホだけで完結できるか」「通勤時間に操作できるか」など、実際の使用シーンを想定して徹底的に改善しています。マニュアルを読まなくても直感的に使える設計を目指しています。
編集部
教育委員会との関係構築についてはいかがでしょう。
藤原CEO
教育委員会との連携は本当に重要です。私たちは導入前に必ず教育委員会にも説明に伺います。個人情報保護、セキュリティポリシー、既存システムとの整合性など、丁寧にクリアしていく。時間はかかりますが、一度信頼関係を構築できれば、その自治体内での横展開がスムーズになります。現在、23の自治体で推奨ツールとして認定いただいています。
編集部
競合他社との差別化ポイントはどこにあるとお考えですか。
藤原CEO
一番は「現場を知っている」ことです。開発チームの半数は元教員か教育現場経験者。「こういう機能があったら便利」ではなく、「この作業のこの部分が本当に大変」を知っている。例えば、保護者への一斉連絡機能も、ただメッセージを送るだけでなく、「既読確認」「緊急度の自動判定」「過去のやり取り検索」など、実際のコミュニケーションで必要な機能を網羅しています。机上の空論ではないプロダクト開発が強みですね。
EdTechの成功は、どれだけ現場の「痛み」を理解しているかで決まる
── 藤原CEO
教育DXの未来と、クラスアシストが目指す社会
編集部
GIGAスクール構想以降、教育現場のデジタル化は進んでいると感じますか。
藤原CEO
ハード面では確実に進みました。一人一台端末の配備は大きな前進です。ただ、「端末はあるが活用されていない」という課題は依然として大きい。特に教員側のツールとして十分に機能していないケースが多いんです。子ども向けの学習アプリは増えましたが、教員の働き方を変えるツールはまだまだ不足している。そこに私たちの存在意義があると考えています。
編集部
今後、どのような機能拡充を計画されていますか。
藤原CEO
2024年度中に、AI活用機能を大幅に強化します。例えば、生徒の学習記録から個別最適化された指導案を自動生成する機能や、保護者からの相談内容を解析して適切な対応例を提示する機能など。ただし、AIはあくまで教員の判断を補助するもの。最終的な教育判断は必ず人間が行う設計にしています。また、メンタルヘルスケア機能も追加予定です。教員自身のストレスチェックや、気軽に相談できる窓口との連携なども視野に入れています。
編集部
資金調達や事業拡大の計画についても教えてください。
藤原CEO
昨年、シリーズBラウンドで12億円の資金調達を完了しました。主にプロダクト開発とカスタマーサクセス体制の強化に投資しています。今期中に導入校1000校突破を目指しており、来期には海外展開も視野に入れています。特にアジア圏の教育現場でも同様の課題があることが分かってきており、現地パートナーとの協業を進めています。
編集部
最後に、クラスアシストが実現したい未来像をお聞かせください。
藤原CEO
私たちが目指すのは、「先生が先生らしく働ける社会」です。事務作業に追われるのではなく、子どもたち一人ひとりと向き合い、その成長を支える本来の教育活動に時間を使える環境。それが実現すれば、子どもたちの学びの質も確実に向上します。教育の質は、先生の働く環境の質に直結していますから。テクノロジーはあくまで手段。その先にある「豊かな教育」を実現するために、私たちはこれからも現場に寄り添い続けます。EdTechという言葉が特別なものではなく、水や空気のように当たり前のインフラになる日を目指して。
先生が笑顔で教壇に立てる環境こそ、最高の教育投資
── 藤原CEO
まとめ
・元教員の経験から生まれた「現場ファースト」のEdTechプラットフォーム
・教員の業務時間を週8〜10時間削減、全国450校・1万2000名が利用
・「72時間ルール」など手厚いサポート体制で導入のハードルを下げる
・AI機能強化と海外展開を計画、教育DXのインフラを目指す
・教員の業務時間を週8〜10時間削減、全国450校・1万2000名が利用
・「72時間ルール」など手厚いサポート体制で導入のハードルを下げる
・AI機能強化と海外展開を計画、教育DXのインフラを目指す
企業情報
| 会社名 | 株式会社クラスアシスト |
|---|---|
| 業種 | 教育・EdTech |
| 役職 | 代表取締役CEO |
| 代表者 | 藤原 恵美 |