AIとIoTで養豚経営を変革する「スマート畜産プラットフォーム」の挑戦
農業・食農テック

AIとIoTで養豚経営を変革する「スマート畜産プラットフォーム」の挑戦

データドリブンで畜産業の収益性を3倍に

株式会社アグリマインド

横山 健太郎
代表取締役CEO 横山 健太郎 株式会社アグリマインド

養豚農家の労働時間を40%削減しながら出荷頭数を増やす。IoTセンサーとAI解析を組み合わせた次世代型畜産支援システムで業界に革命を起こす。

養豚業界が抱える構造的課題との出会い

「日本の養豚農家は今、存続の危機に瀕しています」。横山健太郎氏は静かに、しかし力強くそう語り始めた。株式会社アグリマインドは、AIとIoTを活用した養豚経営支援システムを開発し、全国120以上の養豚農家に導入実績を持つ食農テック企業だ。

横山氏が起業を決意したのは、実家の養豚業を手伝っていた大学時代の経験がきっかけだった。「父が経営する農場では、年間5,000頭を出荷していましたが、飼料価格の高騰と人手不足で利益率が年々悪化していました。特に分娩事故率が15%を超え、これが経営を圧迫していたんです」。

IT企業でデータサイエンティストとして5年間勤務した後、2018年に同社を創業。「畜産業界には、製造業では当たり前のデータマネジメントが存在していませんでした。これは大きなチャンスだと確信しました」と当時を振り返る。

センサー技術とAI解析で実現する「予兆管理」

アグリマインドが開発した「PigTech Manager」は、豚舎内に設置した複数のIoTセンサーからリアルタイムでデータを収集する。温度、湿度、CO2濃度といった環境データに加え、個体識別タグによる豚の行動パターン、給餌量、体重変化などを24時間365日モニタリングする。

「特に力を入れているのが分娩予兆の検知です。母豚の行動パターンをAIが分析し、分娩の12時間前にアラートを出します。これにより、農家は適切なタイミングで分娩介助ができ、子豚の圧死や低体温症を防げます」。実際、導入農家では分娩事故率が平均8.2%まで低下し、離乳頭数が1腹あたり1.8頭増加したという。

さらに、疾病の早期発見にも効果を発揮する。「豚熱(CSF)や豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)などの感染症は、発見が遅れると農場全体に壊滅的なダメージを与えます。私たちのシステムは、摂餌行動の変化体温上昇の微細な兆候をAIが検知し、獣医師への通知を自動化しています」。

飼料コスト最適化で粗利益率を改善

養豚経営において飼料費は総コストの約60%を占める最大の変動費だ。横山氏は「ここにメスを入れなければ、真の収益改善は実現できない」と強調する。

PigTech Managerには精密給餌機能が搭載されている。個体ごとの成長曲線をAIが予測し、最適な給餌量とタイミングを自動調整する仕組みだ。「従来は経験則で『育成期は1日2kg』といった画一的な給餌でしたが、個体差は非常に大きい。私たちはデジタルツイン技術で各個体の成長をシミュレーションし、出荷目標体重115kgに対して±2kg以内の精度で到達させます」。

この結果、飼料要求率(FCR)が従来の2.9から2.6に改善し、1頭あたりの飼料コストが約4,200円削減された事例もある。「年間5,000頭出荷する農場なら、それだけで2,100万円のコスト削減です。これは粗利益率を15%から23%に押し上げる計算になります」。

データは嘘をつきません。感覚や経験も大切ですが、それをデータで裏付け、再現性を持たせることが次世代の畜産には不可欠なんです。

横山健太郎氏

労働環境改善と事業承継への貢献

システム導入のもう一つの大きな効果が労働時間の削減だ。養豚業は早朝から深夜まで、365日休みなく豚の世話が必要な過酷な仕事として知られる。「多くの農家では、夜中も2時間おきに分娩豚舎を見回る必要がありました。これが若い世代の就農を阻む大きな要因でした」。

PigTech Managerの導入により、夜間の見回り作業は不要になり、緊急時のみスマートフォンにアラートが届く。「ある導入農家では、月間労働時間が380時間から230時間に削減されました。経営者は『初めて家族と夕食を取れるようになった』と喜んでくださいました」。

この労働環境改善は、事業承継にも好影響を与えている。「データに基づいた経営は、若い世代にとって魅力的です。実際、私たちのシステムを導入した農家の32%で、後継者が戻ってくるか、新規就農者を雇用できたというデータがあります」。

持続可能な畜産業の未来に向けて

アグリマインドは現在、次のステージとしてカーボンニュートラル養豚の実現に取り組んでいる。「畜産業は温室効果ガス排出の大きな要因とされていますが、適切な管理で大幅に削減できます」と横山氏は説明する。

具体的には、豚の糞尿から発生するメタンガスをバイオガス発電に活用し、そのエネルギーで豚舎の空調を管理する循環型システムを開発中だ。「すでに実証実験では、農場のエネルギー自給率を65%まで高めることに成功しています。2025年までにカーボンニュートラル認証農場を50カ所創出することが目標です」。

また、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムも構築中だ。「消費者は『どこで、どのように育てられた豚肉か』を知りたがっています。私たちのシステムで管理された豚肉には、飼育環境、使用飼料、投薬履歴などがすべて記録され、QRコードで確認できるようになります」。

現在、同社の年間経常収益は8.5億円。今後3年間で導入農家数を500に拡大し、売上30億円を目指す。「日本の畜産業を、儲かる産業、魅力的な産業に変えたい。そして世界中の畜産農家にこの技術を届けたいんです」。横山氏の目は、すでに次の地平を見据えている。

📝 まとめ
・AIとIoTを活用した養豚経営支援システム「PigTech Manager」で全国120農家に導入実績
・分娩予兆検知により分娩事故率を15%から8.2%に低減、離乳頭数を1腹あたり1.8頭増加
・精密給餌により飼料要求率を2.9から2.6に改善、1頭あたり約4,200円のコスト削減を実現
・労働時間を月380時間から230時間に削減し、事業承継や新規就農にも好影響

🏢企業情報

会社名 株式会社アグリマインド
業種 農業・食農テック
役職 代表取締役CEO
代表者 横山 健太郎
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