2024年問題を契機に、データドリブンな運営と現場人材の育成を両輪とした経営戦略で業界に新風を吹き込む。創業15年で年商200億円規模に成長した同社の成功の秘訣とは。
データ基盤の構築が生んだ競争優位性
編集部
藤崎社長は物流業界に長く携わってこられましたが、クロスフロー・ロジスティクスを創業したきっかけを教えてください。
藤崎社長
私は大手物流企業で15年ほど営業と現場管理を経験しました。その中で常に感じていたのは、「データが分断されている」という課題です。倉庫、輸配送、在庫管理がそれぞれ独立したシステムで動いており、サプライチェーン全体を俯瞰できない状況でした。2009年の創業時から、私たちは「データ統合による可視化」を最優先課題に据え、独自の物流プラットフォームの開発に着手しました。当時はまだクラウドも普及していない時代でしたが、将来を見据えた投資でしたね。
編集部
創業初期のデータ基盤構築は、相当な投資が必要だったのではないでしょうか。
藤崎社長
おっしゃる通りです。最初の5年間は正直、苦しい経営でした。しかし、このデータ基盤があったからこそ、顧客企業に対して「在庫の最適配置」「配送ルートの効率化」「需要予測に基づいた物流計画」を具体的な数値で提案できるようになりました。特に2015年以降、EC市場の急拡大とともに、リアルタイムでの在庫可視化や配送状況の追跡ニーズが高まり、当社のシステムが大きな武器になりました。現在では200社以上の企業と取引があり、日々1万件以上の配送データを処理しています。
編集部
具体的にどのようなデータを活用されているのでしょうか。
藤崎社長
物流における「5W1H」すべてをデータ化しています。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように運んだのか。これに加えて、気象データや交通情報、さらには配送ドライバーの稼働状況まで統合しています。例えば、ある食品メーカー様では、当社のシステムで需要予測精度が15%向上し、廃棄ロスを年間3,000万円削減できました。また、配送ルートの最適化により、走行距離を約20%削減し、CO2排出量の大幅な低減も実現しています。データは単なる記録ではなく、意思決定の根拠であり、改善の起点なんです。
データは記録ではなく、意思決定の根拠であり、改善の起点です
── 藤崎社長
2024年問題への実践的アプローチ
編集部
物流業界全体が直面している2024年問題について、御社ではどのような対策を講じていますか。
藤崎社長
2024年4月の働き方改革関連法の適用は、確かに業界に大きなインパクトを与えています。ドライバーの時間外労働の上限規制により、従来通りの運行では約14%の輸送能力が失われると言われています。当社では3つの柱で対応しています。第一に「中継輸送の拡大」です。長距離輸送を複数のドライバーでリレーする方式を導入し、一人あたりの労働時間を削減しました。第二に「モーダルシフト」。トラック輸送から鉄道や船舶への切り替えを進めています。第三に「AIによる配車最適化」です。当社独自のアルゴリズムで、積載効率を最大化しながら労働時間を守る配車計画を自動生成しています。
編集部
中継輸送は効率が悪くなるのではという懸念もありますが、実際はいかがでしょうか。
藤崎社長
確かにコスト面での懸念はありました。しかし、中継拠点の戦略的配置とデジタル管理により、むしろトータルコストは3%削減できました。重要なのは中継地点の選定です。当社では全国12カ所に中継拠点を設け、それぞれの拠点で荷物の仕分けと積み替えを15分以内で完了できる体制を構築しています。また、ドライバーは長距離運転から解放され、労働環境が改善したことで離職率が前年比40%減少しました。人材確保が困難な現在、これは大きな競争優位性になっています。
編集部
モーダルシフトの推進には、荷主企業の理解も必要ですね。
藤崎社長
その通りです。モーダルシフトは輸送時間が長くなる傾向がありますので、荷主様には「リードタイムの延長」を受け入れていただく必要があります。しかし、私たちは単に「協力してください」とお願いするのではなく、データに基づいた具体的なメリットを提示しています。例えば、コスト削減額、CO2削減量、さらにはBCP(事業継続計画)の観点から、複数輸送手段を持つことのリスク分散効果などです。環境経営を重視する企業が増えている中、サステナビリティレポートに記載できる具体的な数値を提供できることも、説得材料になっています。実際、モーダルシフトを導入した企業の8割が「想定以上の効果があった」と評価してくれています。
データに基づいた具体的なメリットを提示することで、荷主企業の理解と協力を得ています
── 藤崎社長
人材育成と組織文化の醸成
編集部
テクノロジー活用が進む一方で、人材育成にも力を入れていると伺いました。
藤崎社長
はい。私は「テクノロジーは人を置き換えるのではなく、人を強化するもの」という信念を持っています。当社では年間売上の約3%を人材育成に投資しています。具体的には、全従業員を対象にしたデータリテラシー研修、ドライバー向けの安全運転・接遇研修、管理職向けのマネジメント研修などです。特にドライバーの皆さんには、単なる「運ぶ人」ではなく、「サプライチェーンを支えるプロフェッショナル」としての誇りを持ってもらいたいと考えています。そのため、優れた提案をしたドライバーを表彰する制度や、資格取得支援制度も充実させています。
編集部
現場からの改善提案を重視する文化があるのですね。
藤崎社長
最も現場を知っているのは、実際に荷物を扱い、道を走っているドライバーや倉庫スタッフです。昨年は従業員から1,200件以上の改善提案があり、そのうち約300件を実際に採用しました。例えば、ある倉庫スタッフからの「特定商品の配置を変更すべき」という提案により、ピッキング時間が平均2分短縮されました。これは年間で換算すると膨大な効率化です。提案が採用された従業員には報奨金を支給し、全社会議で表彰しています。こうした文化が、従業員エンゲージメントの向上につながっていると感じています。当社の従業員満足度調査では、業界平均を20ポイント上回る結果が出ています。
編集部
今後の展望について教えてください。特に注力したい分野はありますか。
藤崎社長
今後は3つの方向性で事業を拡大していきます。第一に「グリーンロジスティクスの推進」です。2030年までにCO2排出量を50%削減する目標を掲げており、EV車両の導入や再生可能エネルギーを使用した物流拠点の開発を進めています。第二に「国際物流への展開」です。既に東南アジア2カ国に現地法人を設立しており、日本で培ったノウハウを海外でも展開します。第三に「物流DXコンサルティング事業」です。当社が構築してきたシステムやノウハウを、他の物流事業者にも提供していきたいと考えています。物流業界全体が抱える課題は、一社だけでは解決できません。業界全体の底上げに貢献することが、結果的に当社の成長にもつながると信じています。次の10年で、売上500億円、従業員2,000名規模の企業に成長させ、同時に業界のリーディングカンパニーとして社会的責任を果たしていきます。
まとめ
・独自の物流プラットフォームによるデータ統合で、在庫最適化や配送効率化を実現し競争優位性を確立
・2024年問題に対し、中継輸送・モーダルシフト・AI配車最適化の3本柱で対応し、コスト削減と労働環境改善を両立
・年間売上の3%を人材育成に投資し、現場からの改善提案を積極採用する文化で従業員満足度を向上
・2030年までにCO2排出量50%削減を目標に、グリーンロジスティクス・国際展開・DXコンサルティングで事業拡大を目指す
・2024年問題に対し、中継輸送・モーダルシフト・AI配車最適化の3本柱で対応し、コスト削減と労働環境改善を両立
・年間売上の3%を人材育成に投資し、現場からの改善提案を積極採用する文化で従業員満足度を向上
・2030年までにCO2排出量50%削減を目標に、グリーンロジスティクス・国際展開・DXコンサルティングで事業拡大を目指す
企業情報
| 会社名 | 株式会社クロスフロー・ロジスティクス |
|---|---|
| 業種 | 物流・サプライチェーン |
| 役職 | 代表取締役社長 |
| 代表者 | 藤崎 透 |