膨大な業務データからAIが個人のスキルを自動分析。大手企業を中心に導入が進む「スキルマッピングプラットフォーム」で、人材配置の最適化と社員のキャリア開発を同時に実現する。
データドリブンな人材配置が企業成長のカギ
編集部
まず、タレントグロースのサービス概要について教えてください。
西村CEO
私たちは「スキルマッピングプラットフォーム」というHRテックサービスを提供しています。これは、社員の日々の業務データ——例えばプロジェクト管理ツールやメール、社内SNS、成果物などから、AIが自動的に個人のスキルセットを分析・可視化するシステムです。従来の人事評価は上司の主観や年次面談に依存しがちでしたが、私たちのサービスでは客観的なデータに基づいて、社員一人ひとりの強みや潜在能力を明らかにします。現在、従業員数500名以上の企業を中心に、約80社で導入いただいています。


編集部
このサービスを立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか。
西村CEO
私自身、前職で人事コンサルタントとして10年以上働いていました。その中で痛感したのが、多くの企業が社員の本当の能力を把握できていないという現実です。特に大企業では、優秀な人材が適切でないポジションに配置され、能力を発揮できないまま離職してしまうケースを数多く見てきました。一方で、経営層は「うちには人材がいない」と嘆く。この矛盾を解決したいと思ったのが創業の動機です。2019年の創業から5年、ようやく市場に受け入れられる形が見えてきました。
編集部
競合サービスとの差別化ポイントはどこにありますか。
西村CEO
最大の違いは「自動性」と「リアルタイム性」です。多くの類似サービスは、社員が自己申告でスキルを登録したり、定期的なアセスメントテストを受けたりする必要があります。しかし私たちのシステムは、既存の業務システムと連携することで、日常業務の中から自然にスキルデータを収集・更新します。社員に新たな負担をかけることなく、常に最新のスキルマップが維持される。これが現場の人事担当者から高く評価されているポイントですね。また、AI分析の精度向上にも継続的に投資しており、現在は90%以上の精度でスキルを特定できるようになっています。
社員の本当の能力を把握できていない企業が、あまりにも多すぎる
── 西村CEO
導入企業の成功事例と組織変革の実態
編集部
具体的な導入効果について、事例を教えていただけますか。
西村CEO
印象的だったのは、従業員約3,000名の製造業A社の事例です。この会社では長年、技術部門での人材不足に悩んでいました。しかし私たちのシステムを導入したところ、営業部門に高度な技術知識を持つ社員が複数名いることが判明したんです。彼らは以前エンジニアとして働いていたものの、組織再編で営業に異動していた。本人たちも「技術の仕事がしたい」と思いながら、声を上げられずにいました。結果的に5名を技術部門に再配置したところ、プロジェクトの進行速度が30%向上し、離職率も大幅に低下しました。
編集部
社員からの反応はいかがでしたか。抵抗感などはなかったのでしょうか。
西村CEO
導入初期は確かに「監視されているようで不快」という声もありました。これは私たちも想定していた課題です。そのため、データの透明性と本人へのフィードバックを徹底しています。分析されたスキルデータは本人が最初に確認でき、修正や非公開設定も可能です。また、このデータは人事評価には直接使わず、あくまで「キャリア開発と適材適所のため」と明確に位置づけています。実際、導入から3ヶ月ほど経つと、社員自身が自分のスキルマップを見て「こんな強みがあったのか」と気づき、キャリア相談が増えるケースが多いですね。
編集部
人事部門の業務効率化にも貢献しているのでしょうか。
西村CEO
大いに貢献しています。ある金融機関では、新規プロジェクトの人材選定に従来は2週間かかっていたものが、わずか2時間に短縮されました。必要なスキルセットを入力すれば、AIが最適な候補者を即座にリストアップしてくれます。人事担当者は「ようやく戦略的な仕事に時間を使えるようになった」と喜んでくださっています。また、タレントマネジメントの文脈でも、後継者育成計画やスキルギャップ分析などに活用いただいており、CHROの方々からは「経営会議で人材戦略を語る際の説得力が格段に上がった」という声もいただいています。
データは監視のためではなく、可能性を開くために使うべきもの
── 西村CEO
HRテック市場の未来と事業展望
編集部
今後のプロダクト開発の方向性について教えてください。
西村CEO
現在、二つの大きな方向性で開発を進めています。一つは「スキルマッチング」から「キャリアパス提案」への進化です。現在のスキルデータに加えて、市場動向や企業の事業戦略を分析し、「このスキルを身につければ3年後にこのポジションが目指せる」といった具体的なキャリアロードマップをAIが提案する機能を開発中です。もう一つは、企業を超えた人材流動性の支援です。複数企業でコンソーシアムを組み、スキルデータを相互に参照できる仕組みを構想しています。これにより、社内だけでなく、グループ会社間や業界内での最適な人材配置が可能になります。
編集部
日本のHRテック市場をどう見ていますか。
西村CEO
まだまだ成長余地は大きいと感じています。欧米と比較すると、日本企業のHRテックへの投資は5年ほど遅れているというのが実感です。しかし逆に言えば、それだけ伸びしろがあるということ。特に「人的資本経営」が注目される中、人材データの可視化は避けて通れない課題になっています。2023年からは上場企業に人的資本情報の開示が義務化され、経営層の意識も大きく変わってきました。今後5年で、HRテックは「あったら便利」から「なければ経営できない」インフラへと変わっていくでしょう。
編集部
最後に、西村CEOが目指す未来像をお聞かせください。
西村CEO
私が実現したいのは、「すべての働く人が、自分の可能性を最大限に発揮できる社会」です。日本には「適材適所」という素晴らしい言葉がありますが、実際にはそれが実現できていない企業が多すぎます。テクノロジーの力で、一人ひとりの強みを正確に把握し、最も輝けるポジションにマッチングする。それが実現できれば、個人も企業も、そして社会全体も豊かになるはずです。タレントグロースは単なるソフトウェア企業ではなく、働き方の未来を創る社会インフラ企業を目指しています。今後は海外展開も視野に入れており、2025年中にはシンガポールとベトナムでのサービス開始を予定しています。日本発のHRテックで、グローバルに人材の可能性を解放していきたいですね。
すべての働く人が、自分の可能性を最大限に発揮できる社会を創りたい
── 西村CEO
まとめ
・AIが業務データから自動的に社員のスキルを分析・可視化する「スキルマッピングプラットフォーム」を展開
・製造業での事例では、営業部門から技術部門への最適な人材再配置により、プロジェクト進行速度が30%向上
・人事部門の業務効率化に貢献し、人材選定時間を2週間から2時間に短縮した実績も
・今後はキャリアパス提案機能の開発や、企業間での人材流動性支援を目指し、2025年には海外展開も予定
・製造業での事例では、営業部門から技術部門への最適な人材再配置により、プロジェクト進行速度が30%向上
・人事部門の業務効率化に貢献し、人材選定時間を2週間から2時間に短縮した実績も
・今後はキャリアパス提案機能の開発や、企業間での人材流動性支援を目指し、2025年には海外展開も予定
企業情報
| 会社名 | 株式会社タレントグロース |
|---|---|
| 業種 | 人材・HRテック |
| 役職 | 代表取締役CEO |
| 代表者 | 西村 優香 |