不登校児童が自宅で学べるオンライン学習プラットフォームを開発。AIによる個別最適化と、専門カウンセラーとの連携で、子どもたちの「学ぶ権利」を守る新しい教育の形を追求する。
不登校支援という社会課題への挑戦
編集部
まず、スタディコンパスのサービス概要について教えてください。
藤原CEO
私たちは不登校や学校に行きづらい児童・生徒向けのオンライン学習プラットフォームを提供しています。単なる動画配信ではなく、一人ひとりの学習進度や心理状態に合わせてAIがカリキュラムを最適化し、さらに専門の教育カウンセラーが定期的にオンライン面談を行う仕組みです。現在、全国で約3,200名の児童・生徒が利用しており、提携する教育委員会は42自治体に広がっています。最大の特徴は、文部科学省の出席認定制度に対応している点で、保護者の方々からも高い評価をいただいています。
編集部
このサービスを立ち上げた背景には、どのような想いがあったのでしょうか。
藤原CEO
実は私自身、中学時代に一時期不登校を経験しているんです。当時は「学校に行けない自分はダメな人間だ」と自分を責め続けていました。でも本当は学びたい気持ちはあったんです。ただ、学校という場所や集団の中で学ぶことが難しかっただけで。その後、通信制高校を経て大学に進学し、教育系のスタートアップで働く中で、不登校児童が年々増加している現状を知りました。令和4年度には約30万人と過去最多を更新しています。でも、彼らを支援する選択肢は限られている。この社会課題を解決したいと2020年に起業しました。
編集部
起業から4年目ですが、ここまでの道のりはいかがでしたか。
藤原CEO
正直、想像以上に困難の連続でした。特に初期は資金調達に苦労しましたね。投資家の方々からは「市場規模が限定的」「収益化が難しい」といった声が多く、社会的意義は理解してもらえても、ビジネスとしての可能性に疑問を持たれることが多かったんです。でも、実際に私たちのサービスで学び始めた子どもたちが、少しずつ自信を取り戻していく姿を見て、これは絶対に必要なサービスだと確信しました。転機となったのは、ある教育委員会の担当者が私たちのサービスを評価してくださり、公的な不登校支援事業として採用していただいたことです。そこから他の自治体にも広がっていきました。
学校に行けないことは、学ぶ権利を失うことではない
── 藤原CEO
テクノロジーと人の温もりの融合
編集部
AIによる個別最適化について、具体的にどのような技術を使っているのでしょうか。
藤原CEO
私たちのAIシステムは、学習データだけでなく、ログイン時間や学習ペース、休憩の取り方なども分析しています。不登校の子どもたちは、心理的な不安定さから学習リズムが一定でないことが多いんです。例えば、ある日は集中して3時間学習できても、次の日は10分しか取り組めないということもある。一般的なEdTechサービスは「毎日決まった時間に学習する」ことを前提にしていますが、それが難しい子どもたちがいる。だから私たちは、その日のコンディションに応じて学習内容の難易度や量を調整するアルゴリズムを開発しました。無理をさせず、でも着実に学力を積み上げていける設計になっています。
編集部
一方で、人によるサポートも重視されているとのことですが、その役割は何でしょうか。
藤原CEO
テクノロジーだけでは絶対に解決できない部分があります。それが心のケアと信頼関係の構築です。私たちには約50名の専門カウンセラーが在籍しており、全員が臨床心理士や公認心理師などの資格保持者です。彼らが月に2〜4回、一人ひとりの子どもとオンライン面談を行い、学習面だけでなく、日常の悩みや将来の不安についても寄り添います。AIが「何を学ぶか」を最適化するなら、カウンセラーは「なぜ学ぶのか」「どう生きていくのか」という根本的な部分を一緒に考える存在です。実際、保護者アンケートでは、このカウンセリング機能が最も高く評価されています。
編集部
保護者との連携についてはどのように考えていますか。
藤原CEO
保護者支援は極めて重要です。子どもが不登校になると、保護者の方も大きな不安や罪悪感を抱えることが多いんです。「自分の育て方が悪かったのではないか」と自分を責めてしまう。だから私たちは、保護者向けのコミュニティ機能も提供しています。同じ境遇の保護者同士がオンラインで情報交換できる場や、専門家による月例セミナーなども開催しています。また、保護者専用のダッシュボードで子どもの学習状況を確認できるようにしていますが、これは「監視」ではなく「見守り」の視点を大切にしています。細かすぎる進捗報告はせず、大きな変化があったときだけお知らせする設計にしています。
AIが最適化するのは学習内容。人が寄り添うのは、その子の人生そのもの
── 藤原CEO
これからの教育の多様性と社会実装への挑戦
編集部
文部科学省の出席認定制度への対応は、どのように実現したのでしょうか。
藤原CEO
これは本当に大きなハードルでした。出席認定を受けるためには、学習内容が学習指導要領に準拠していること、学校長の判断があること、対面での指導体制があることなど、様々な要件があります。私たちは各教科の元教員を監修者として迎え、カリキュラムの完全準拠を実現しました。また、提携校制度を設けて、月に1回程度は提携校で対面の学習サポートを受けられる仕組みも構築しています。さらに、学校への報告書作成機能も実装し、担任の先生が子どもの学習状況を把握しやすいようにしました。現在、利用者の約78%が出席認定を受けています。
編集部
今後の事業展開について教えてください。
藤原CEO
短期的には、高校生向けサービスの拡充に注力します。現在は小中学生が中心ですが、高校での不登校・中退者も深刻な問題です。特に高校では進路選択が重要になるため、キャリア教育や大学受験対策も含めたサービスを開発中です。中長期的には、不登校だけでなく、病気療養中の子どもや、海外在住で日本の教育を受けたい子どもなど、様々な理由で通常の学校教育を受けにくい子どもたちをサポートしていきたいと考えています。教育の機会は、すべての子どもに平等に保障されるべきです。
編集部
最後に、EdTech業界全体の未来についてどのように考えていますか。
藤原CEO
EdTechは「既存の教育を効率化する」段階から、「新しい学びの選択肢を創造する」段階に入ったと感じています。私たちのような不登校支援もそうですし、社会人向けリスキリング、障がい者向け学習支援など、多様なニーズに応える個別最適化された教育が実現できる時代になりました。ただし、テクノロジーは手段であって目的ではありません。常に「この技術は本当に学習者のためになっているのか」と自問する姿勢が重要です。私自身、不登校を経験したからこそ、教育から取り残される子どもを一人でも減らしたい。それが私の使命だと思っています。今後も、技術と人の温もりの両方を大切にしながら、子どもたちの可能性を広げるサービスを提供し続けたいですね。
教育の未来は、一人ひとりの「違い」を認め、それぞれに最適な学びを届けること
── 藤原CEO
まとめ
・不登校児童向けオンライン学習プラットフォームで全国3,200名が利用、42自治体と提携
・AIによる個別最適化と専門カウンセラーによる心理サポートを融合した独自モデル
・文部科学省の出席認定制度に対応し、利用者の78%が認定を取得
・代表自身の不登校経験を原動力に、教育機会の平等を追求する社会的企業
・AIによる個別最適化と専門カウンセラーによる心理サポートを融合した独自モデル
・文部科学省の出席認定制度に対応し、利用者の78%が認定を取得
・代表自身の不登校経験を原動力に、教育機会の平等を追求する社会的企業
企業情報
| 会社名 | 株式会社スタディコンパス |
|---|---|
| 業種 | 教育・EdTech |
| 役職 | 代表取締役CEO |
| 代表者 | 藤原 美咲 |