在宅医療の未来を拓く──地域密着型ICTプラットフォームの挑戦
医療・ヘルスケア

在宅医療の未来を拓く──地域密着型ICTプラットフォームの挑戦

医療格差をテクノロジーで解消する、在宅医療DXのパイオニア

株式会社メディカルリンク

森川 恵子
代表取締役CEO 森川 恵子 株式会社メディカルリンク

超高齢社会を迎えた日本で、在宅医療と介護の連携を支えるクラウドプラットフォームを展開。地域包括ケアの課題解決に挑む、森川CEOに事業の核心と展望を聞いた。

在宅医療に特化したICTプラットフォームの開発背景

編集部
まず、株式会社メディカルリンクの事業内容について教えてください。
森川CEO
私たちは在宅医療と介護に特化したクラウド型の連携プラットフォーム「CareLink」を開発・提供しています。具体的には、訪問診療クリニック、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、薬局、そして患者様のご家族まで、在宅医療に関わる全てのステークホルダーが情報を安全に共有できるシステムです。現在、全国47都道府県で約2,800の医療・介護事業所、約15万人の患者様にご利用いただいています。
編集部
在宅医療の分野に着目された理由は何だったのでしょうか。
森川CEO
私自身、以前は大手医療機器メーカーで営業をしていたのですが、ある訪問診療医の先生との出会いが転機になりました。その先生は、深夜でも患者様からの電話一本で駆けつけ、最期まで自宅で過ごしたいという願いを支えていらっしゃった。でも、情報共有は紙のFAXやバラバラの電話連絡で、連携の非効率さが医療従事者の負担になっているのを目の当たりにしたんです。2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、在宅医療のニーズは爆発的に増える。この領域にこそ、ICTの力が必要だと確信しました。
編集部
起業までの経緯を聞かせてください。
森川CEO
2017年に会社を退職して、まずは半年間、全国の在宅医療の現場を回りました。北海道から沖縄まで、約80の事業所を訪問してヒアリングを重ねたんです。そこで見えてきたのは、地域ごとに連携の形は違うけれど、「情報の分断」という課題は共通しているということでした。医師が書いたカルテの情報が看護師に届かない、服薬状況が薬剤師に共有されない、家族が患者の状態を把握できない。この課題を解決するために、2018年に株式会社メディカルリンクを設立しました。

在宅医療の現場には、患者様の「家で最期まで」という願いを支える人たちの献身があります。その献身を、テクノロジーで支えたい。

── 森川CEO

医療情報連携の難しさとブレイクスルー

編集部
開発において最も苦労された点は何でしたか。
森川CEO
セキュリティと使いやすさの両立ですね。医療情報は最も機微な個人情報ですから、三省ガイドラインに準拠した厳格なセキュリティが求められます。一方で、現場の医療従事者は多忙ですし、ITリテラシーも様々です。高齢の訪問看護師さんもいらっしゃる。どんなに強固なセキュリティでも、使われなければ意味がない。この相反する要求を満たすために、UIデザインには特に時間をかけました。実際の現場で何度もユーザビリティテストを繰り返し、「誰でも3分で使える」を目標に改善を重ねました。
編集部
医療機関への導入において、どのようなハードルがありましたか。
森川CEO
初期は本当に苦戦しました。「また新しいシステムか」という反応が多くて。医療現場には既に電子カルテや様々なシステムがありますから、新たなツールを導入する心理的ハードルは高いんです。そこで私たちが取った戦略は、小さな成功事例を丁寧に作ることでした。まず一つの診療所と訪問看護ステーションのペアで導入いただき、情報共有がスムーズになった、夜間の電話が減ったという具体的な効果を実感してもらう。その成功体験を地域内で共有していただくことで、少しずつネットワークが広がっていきました。
編集部
現在の事業規模と成長の軌跡について教えてください。
森川CEO
創業6年目で、従業員数は120名になりました。売り上げも順調に伸びており、昨年度は前年比180%を達成しています。特にコロナ禍を経て、遠隔での情報共有ニーズが急速に高まったことが追い風になりました。対面での会議やカンファレンスが難しくなる中、私たちのプラットフォーム上でオンラインカンファレンスを行う医療チームが増えたんです。現在は在宅医療だけでなく、地域包括ケア全体を支援するため、介護施設向けの機能拡張や、自治体との連携も進めています。

システム導入は手段であって目的ではありません。大切なのは、それによって患者様のQOLが向上し、医療従事者の負担が軽減されることです。

── 森川CEO

地域医療DXの未来と社会的インパクト

編集部
これからの在宅医療において、テクノロジーはどのような役割を果たすとお考えですか。
森川CEO
在宅医療の本質は「チーム医療」だと考えています。一人の患者様を、多職種の専門家がチームで支える。でも、物理的に同じ場所にいられない在宅という環境では、情報共有がチームワークの要になります。テクノロジーは、時間と場所を超えてチームを繋ぐインフラなんです。さらに今後は、AIによる情報分析で、病状の変化を早期に検知したり、最適なケアプランを提案したりといった、予防的・先制的な医療も可能になると考えています。実際、私たちも今、バイタルデータの分析AIを開発中です。
編集部
地方と都市部での医療格差という問題についてはいかがですか。
森川CEO
これは非常に重要な課題です。地方では医師不足が深刻で、在宅医療の担い手が限られています。私たちのプラットフォームは、都市部の専門医と地方の在宅医をオンラインで繋ぐ機能も実装しています。例えば、地方の訪問診療医が専門的な判断に迷ったとき、都市部の大学病院の専門医にシステム上で相談できる。画像や検査データも即座に共有できます。これにより、地方でも高度な医療判断にアクセスできる体制を作れる。テクノロジーによる医療の民主化ですね。実際、離島の診療所とも連携を始めていて、手応えを感じています。
編集部
今後の事業展開について、具体的な計画をお聞かせください。
森川CEO
短期的には、介護施設との連携強化を進めています。特別養護老人ホームや有料老人ホームでの看取りも増えていますので、施設と医療機関をシームレスに繋ぐ機能を充実させます。中長期的には、PHR(Personal Health Record)の領域にも踏み込んでいきたい。患者様やご家族が自分の医療・健康情報を一元管理し、必要なときに医療従事者と共有できる仕組みです。人生の最終段階における医療やケアについて、本人の意思を尊重した意思決定支援も、プラットフォーム上で実現したいと考えています。
編集部
最後に、森川CEOが目指す社会像について教えてください。
森川CEO
私が実現したいのは、「誰もが、どこでも、自分らしい最期を選べる社会」です。今の日本では、約8割の方が病院で亡くなります。でも、本当は自宅で最期を迎えたいと思っている人は多い。その選択肢を、経済状況や住んでいる地域に関係なく、誰もが持てるようにしたいんです。在宅医療は、医療費削減という経済的な側面だけで語られがちですが、本質は「生き方の選択肢」を広げることだと思っています。テクノロジーでインフラを整え、医療従事者を支え、患者様とご家族に安心を届ける。それが私たちの使命です。まだ道半ばですが、全国の志を同じくする医療・介護従事者の皆さんと一緒に、この大きなビジョンを実現していきたいと思っています。

在宅医療のDXは、単なる効率化ではありません。それは、人生の最終章における尊厳を守る社会インフラなんです。

── 森川CEO
📝 まとめ
・在宅医療・介護連携に特化したクラウドプラットフォーム「CareLink」を開発し、全国2,800事業所・15万人が利用
・セキュリティと使いやすさを両立させ、「誰でも3分で使える」UIを実現し現場の情報共有を革新
・地方と都市部の医療格差解消に向け、オンライン専門医相談など遠隔連携機能を実装
・PHR領域への展開や意思決定支援を通じて「誰もが自分らしい最期を選べる社会」の実現を目指す

🏢企業情報

会社名 株式会社メディカルリンク
業種 医療・ヘルスケア
役職 代表取締役CEO
代表者 森川 恵子
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