長野県を拠点に着地型観光プラットフォームを展開する株式会社トラベルコネクト信州。地域の事業者と旅行者をテクノロジーで結び、観光を通じた地方創生に挑む藤崎社長に、これからの観光業界のあり方を伺った。
着地型観光プラットフォームという新たな挑戦
編集部
まず、御社の事業内容について教えてください。
藤崎社長
当社は長野県を中心に、着地型観光のデジタルプラットフォームを運営しています。従来の旅行会社のように大手が企画したパッケージツアーを販売するのではなく、地域の小規模な事業者——例えば農家民宿、ローカルガイド、酒蔵、工芸作家など——が提供する体験型コンテンツを、旅行者と直接マッチングするサービスです。2019年の創業当初は20事業者でスタートしましたが、現在は長野県内だけで約350事業者、さらに山梨、岐阜、新潟にもネットワークを広げ、登録コンテンツは1,200件を超えました。
編集部
着地型観光に注目された理由は何でしょうか。
藤崎社長
私自身、大手旅行代理店で10年間働いていましたが、画一的なツアーでは旅行者の多様なニーズに応えきれないと感じていました。一方で、地方には素晴らしい資源があるのに、情報発信力やデジタルスキルの不足で埋もれてしまっている。この両者をつなげば、旅行者にとっても地域にとってもwin-winになると確信したんです。特にコロナ禍を経て、大人数での団体旅行よりも、少人数で深く地域と関わる旅へのニーズが高まっています。
編集部
プラットフォームの特徴を教えてください。
藤崎社長
最大の特徴は「地域コンシェルジュ」制度です。単なるオンライン予約サイトではなく、各エリアに専属のコンシェルジュを配置し、旅行者の要望をヒアリングして最適な体験プランを組み立てます。例えば「日本酒が好きで、自然も楽しみたい」というお客様には、酒蔵見学と森林セラピーを組み合わせるといった具合です。デジタルの効率性と人的サポートの温かみを両立させることで、満足度の高い旅を実現しています。実際、リピート率は68%に達しています。
地方の宝を発掘し、旅行者と結ぶ。それが私たちの使命です
── 藤崎社長
地域事業者との二人三脚による価値創造
編集部
地域事業者との連携で工夫されている点は。
藤崎社長
単に集客支援をするだけでなく、コンテンツ開発から一緒に取り組むことを重視しています。多くの地域事業者は自分たちの価値に気づいていないことが多いんです。例えば、ある養蜂家さんは「蜂蜜を売るだけ」と思っていましたが、私たちが「養蜂体験と採蜜、テイスティングを組み合わせたプログラム」を提案したところ、今では人気コンテンツの一つになりました。事業者の想いや背景にあるストーリーを丁寧に聞き取り、それを体験価値に変換するプロセスを大切にしています。
編集部
地域事業者のデジタル対応支援はどのように。
藤崎社長
確かに、地方の小規模事業者の中にはパソコン操作が苦手な方もいらっしゃいます。そこで当社では専用のシンプルな管理画面を開発し、スマートフォンからでも予約管理や顧客とのメッセージのやり取りができるようにしました。また、各地域で定期的に勉強会を開催し、写真の撮り方、紹介文の書き方、SNS活用法などをレクチャーしています。最初は「難しそう」と言っていた70代の農家さんが、今では自らInstagramで情報発信されているのを見ると、本当に嬉しくなりますね。
編集部
収益モデルはどのような形ですか。
藤崎社長
基本的には予約成立時の手数料モデルで、予約金額の15〜20%をいただいています。ただし、小規模事業者の負担を考慮し、年間売上が一定額以下の事業者には手数料を10%に抑えるなど、柔軟に対応しています。また、自治体や観光協会との協働事業も増えており、地域全体のプロモーション支援やDX推進のコンサルティング業務も収益の柱になっています。2023年度の売上は前年比180%成長し、4.2億円に達しました。
テクノロジーは手段。大切なのは地域の人々との信頼関係です
── 藤崎社長
観光を通じた持続可能な地域づくり
編集部
サステナブルツーリズムへの取り組みについて聞かせてください。
藤崎社長
持続可能な観光は当社の根幹にあるテーマです。具体的には、環境負荷の少ない体験を積極的に推奨しています。電動自転車でのサイクリングツアー、地産地消の食体験、廃材を使ったワークショップなどです。また「1予約につき100円を地域の環境保全活動に寄付」する仕組みも導入しました。昨年は約300万円を森林保全や河川清掃活動に還元できました。旅行者の方々も、単に楽しむだけでなく、地域に貢献できることに価値を感じてくださっています。
編集部
オーバーツーリズム対策はどう考えていますか。
藤崎社長
これは非常に重要な課題です。人気スポットへの集中を避けるため、あえて「隠れた名所」や「穴場体験」を積極的に紹介しています。例えば、白馬や軽井沢といった有名観光地だけでなく、木曽や北信濃の小さな集落での滞在プログラムを充実させています。また、予約時に混雑状況をリアルタイムで表示し、分散化を促す工夫もしています。観光は地域にとって重要な産業ですが、住民の生活や自然環境を守ってこそ持続可能になります。そのバランスを常に意識しています。
編集部
今後の展望をお聞かせください。
藤崎社長
短期的には、対応エリアを全国20県まで拡大する計画です。特に東北や四国、九州など、まだ十分に観光資源が活用されていない地域に注力したいと考えています。中長期的には、インバウンド向けの多言語対応を強化し、日本の地方の魅力を世界に発信したいですね。また、地域事業者の経営支援機能も拡充し、売上分析ツールやマーケティング支援なども提供していきたいと考えています。最終的には、観光を通じて地方に雇用と誇りを生み出す——それが私たちのビジョンです。
編集部
最後に、業界を目指す若い世代へメッセージをお願いします。
藤崎社長
観光業は確かに大変な面もありますが、人々の人生に豊かな思い出を提供できる、本当に素晴らしい仕事です。特にこれからは、単なる移動や宿泊の手配ではなく、地域の文化や人とのつながりを創出するクリエイティブな職業になっていくと思います。語学力やITスキルも大切ですが、何より「人の話を聞く力」と「地域への愛情」が重要です。ぜひ、自分の足で地域を歩き、そこにある価値を発見する喜びを感じてほしいですね。一緒に、未来の観光を創っていきましょう。
観光は地域の未来を創る。その最前線で働ける喜びを感じています
── 藤崎社長
まとめ
・着地型観光プラットフォームで地域の小規模事業者と旅行者を直接マッチング、350事業者・1,200件のコンテンツを展開
・デジタル効率性と「地域コンシェルジュ」による人的サポートを組み合わせ、リピート率68%を実現
・事業者のコンテンツ開発から伴走し、デジタルスキル支援も実施。2023年度売上は前年比180%の4.2億円
・サステナブルツーリズムを推進し、環境配慮型体験の提案や地域への寄付システムで持続可能な観光モデルを構築
・デジタル効率性と「地域コンシェルジュ」による人的サポートを組み合わせ、リピート率68%を実現
・事業者のコンテンツ開発から伴走し、デジタルスキル支援も実施。2023年度売上は前年比180%の4.2億円
・サステナブルツーリズムを推進し、環境配慮型体験の提案や地域への寄付システムで持続可能な観光モデルを構築
企業情報
| 会社名 | 株式会社トラベルコネクト信州 |
|---|---|
| 業種 | 観光・ホテル・旅行 |
| 役職 | 代表取締役社長 |
| 代表者 | 藤崎 美咲 |