地方発AIで日本の製造業を変革する──株式会社クロスブリッジ 代表インタビュー
AI・DX

地方発AIで日本の製造業を変革する──株式会社クロスブリッジ 代表インタビュー

製造現場のDXを、地方から全国へ広げる挑戦

株式会社クロスブリッジ

岡部 真一
代表取締役CEO 岡部 真一 株式会社クロスブリッジ

長野県から始まった製造業向けAI画像検査システム。職人技のデジタル化で、中小工場が抱える人手不足と品質維持の課題を同時に解決する。地方発スタートアップの戦略と未来像を聞く。

地方発スタートアップが選んだ「製造業AI」という勝負領域

編集部
まず、クロスブリッジの事業内容について教えてください。
岡部CEO
当社は製造業特化型のAI画像検査システムを開発・提供しています。具体的には、工場の製造ラインに設置したカメラとAIで製品の外観検査を自動化するソリューションです。従来は熟練検査員が目視で行っていた傷や汚れ、寸法の異常検出を、AIが24時間体制で高精度に実施します。現在、全国120社以上の製造業のお客様に導入いただいており、検査工程の省人化と品質安定化を実現しています。
編集部
なぜ製造業のAI化に着目されたのですか?
岡部CEO
私自身が長野県の製造業が盛んな地域出身で、地元企業の課題を肌で感じていたことが大きいですね。日本の製造業、特に中小企業は深刻な人手不足に直面しています。特に検査工程は熟練の技能が必要で、その技術継承が途絶えかけている。一方で品質へのこだわりは絶対に譲れない。この矛盾を解決するには、職人の「目」をデジタル化するしかないと考えました。2018年の創業当初から、この領域一本で勝負してきました。
編集部
あえて地方で起業された理由は?
岡部CEO
製造業の現場は地方にあるんです。東京でプロダクトを作っても、現場の本当の課題は見えません。長野に本社を置き、実際の工場に何度も足を運んで、現場の声を直接聞く。試作機を持ち込んで実証実験を繰り返す。この泥臭いプロセスこそが、使える製品を作る最短ルートだと確信しています。結果として、大手SIerが入り込めなかった中小製造業のニーズを的確に捉えられました。地方発だからこその強みですね。

職人の「目」をデジタル化する。それが日本の製造業を救う唯一の道だと信じています。

── 岡部CEO

技術と現場の「架け橋」になる──独自の導入支援体制

編集部
御社のシステムの技術的な特徴を教えてください。
岡部CEO
最大の特徴は「少量学習でも高精度」という点です。一般的なAI画像認識は数千〜数万枚の学習データが必要ですが、当社の独自アルゴリズムでは100〜200枚程度でも実用レベルの精度を実現できます。これは多品種少量生産が多い日本の製造業にとって非常に重要です。また、既存の生産ラインに後付けできる設計になっているため、大規模な設備投資なしに導入できます。初期投資を抑えながら段階的にDXを進められる点が、中小企業に支持されている理由です。
編集部
技術だけでなく、導入支援にも力を入れているそうですね。
岡部CEO
はい、ここが当社の真の差別化ポイントかもしれません。AIシステムは導入して終わりではなく、現場に定着させるまでが勝負です。当社では「現場伴走型」の導入支援を提供しています。専任のカスタマーサクセス担当が、導入前の業務分析から、設置後の運用改善まで3ヶ月間密着サポートします。特に現場の作業員の方々への丁寧な説明と、操作トレーニングには時間をかけますね。「AIに仕事を奪われる」という不安を解消し、「AIは自分たちの味方だ」と感じてもらえるまで関わります。
編集部
現場の抵抗感をどう乗り越えていますか?
岡部CEO
最初から完璧を目指さないことです。まずは検査工程の一部、例えば「明らかな不良品だけをAIが弾く」といった限定的な使い方から始めます。検査員の方には最終判断を残してもらう。そうすると「AIが単純作業を減らしてくれて、自分は難しい判断に集中できる」と実感してもらえます。成功体験を積み重ねながら、徐々に自動化の範囲を広げていく。この段階的アプローチが、現場との信頼関係構築の鍵ですね。導入企業の定着率は98%を超えています。
編集部
投資回収期間はどのくらいですか?
岡部CEO
平均で1年半から2年程度です。検査工程の省人化による人件費削減、不良品流出防止による品質コスト削減、そして検査速度向上による生産性向上を合わせると、多くの企業で24ヶ月以内にROIがプラスになります。特に人手不足で残業代が膨らんでいる企業では、もっと早く回収できるケースもありますね。

AIと人は対立するものではなく、協働するパートナー。その関係性を現場で作ることが私たちの使命です。

── 岡部CEO

次なる展開──データ活用で製造業の「予知力」を高める

編集部
今後の事業展開について教えてください。
岡部CEO
現在は検査工程のAI化が中心ですが、次のステップとして「予知保全」と「工程最適化」の領域に進出します。蓄積された検査データを分析すると、不良品が増える予兆や設備異常の兆候が見えてくるんです。これを機械学習で解析し、「3日後に設備Aでトラブルが起きる確率が高い」といった予測情報を提供する。事後対応から予防保全へのシフトですね。2024年度中にβ版をリリース予定です。
編集部
データ活用がさらに進むわけですね。
岡部CEO
そうです。製造業のDXの本質は、現場で眠っているデータを価値に変えることだと考えています。今までは検査結果も、設備の稼働ログも、ベテランの暗黙知も、すべてがバラバラに存在していました。これらを統合的に可視化・分析できるプラットフォームを構築中です。「デジタルツイン」という言葉が流行っていますが、私たちは中小企業でも使える、シンプルで実用的なデジタルツインを目指しています。
編集部
地方の製造業が抱える課題は、AIで本当に解決できるのでしょうか?
岡部CEO
すべてではありませんが、大きな部分は解決できると信じています。人手不足、技術継承、品質管理、生産効率──これらは確実にテクノロジーでサポートできます。ただし重要なのは、AIを導入すること自体が目的ではないということです。あくまで人を中心に、その能力を最大化するためのツールとしてAIを位置づける。この哲学がブレなければ、日本の製造業はまだまだ世界で戦えます。当社はそのための「架け橋」でありたいと思っています。
編集部
最後に、今後の目標を聞かせてください。
岡部CEO
5年以内に導入企業1000社を目指しています。そして単なるベンダーではなく、製造業の経営パートナーとして信頼される存在になりたい。AIやDXという言葉が特別なものではなく、水道や電気のように当たり前のインフラになる。そんな未来を地方から作っていきます。長野で培ったノウハウを全国へ、そしていずれは東南アジアの製造業にも展開したいですね。地方発グローバル企業、それが私たちの最終目標です。

5年後、AIは製造業にとって空気のような存在になる。私たちはその未来を地方から創ります。

── 岡部CEO
📝 まとめ
・製造業特化型AI画像検査システムで、熟練検査員の「目」をデジタル化し人手不足と品質維持を両立
・少量学習で高精度を実現する独自技術と、現場伴走型の導入支援で中小企業の定着率98%超を達成
・検査データを活用した予知保全・工程最適化へ展開し、製造業のデータ駆動経営を支援
・地方に本社を置き現場密着型の開発を続け、5年以内に導入企業1000社とグローバル展開を目指す

🏢企業情報

会社名 株式会社クロスブリッジ
業種 AI・DX
役職 代表取締役CEO
代表者 岡部 真一
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