士業の枠を超えた「経営支援プラットフォーム」への転換
「行政書士事務所を開業した当初は、建設業許可や産業廃棄物処理業許可といった許認可申請業務が中心でした。しかし、クライアントと対話を重ねる中で気づいたんです。彼らが本当に困っているのは書類作成ではなく、その先にある経営課題だということに」
そう語るのは、株式会社リーガルブリッジ・パートナーズ代表取締役CEO・行政書士の高橋健太郎氏。同社は福岡県を拠点に、行政書士業務を核としながらも、ITコンサルティング、補助金申請支援、人事労務コンサルティングまでを包括的に提供するワンストップ型の士業コンサルティングファームとして注目を集めている。
創業5年で顧客数は320社を突破。特筆すべきは顧客単価の推移だ。創業時の平均月額顧問料は8万円程度だったが、現在は24万円と約3倍に成長。さらに顧客継続率は94%を誇り、単発案件から継続的なパートナーシップへの転換に成功している。
「士業の多くは『資格業務』の範囲内で完結してしまいます。しかし、中小企業経営者が求めているのは書類ではなく『成果』。私たちは法務を入口に、経営全体を俯瞰した支援を行うことで、真の経営パートナーになることを目指しています」
デジタル化で実現した「月次レポート経営」の仕組み
同社の強みは、士業×ITの掛け算にある。高橋氏自身がシステムエンジニア出身という異色の経歴を持ち、その知見を活かして独自のクライアント管理システム「LBP Cloud」を開発した。
「多くの士業事務所では、情報が属人化しています。担当者の頭の中や紙のファイルに重要な情報が眠っている状態では、組織的な支援は不可能です」と高橋氏は指摘する。LBP Cloudでは、許認可の更新時期、補助金申請のタイミング、労務トラブルのリスク指標など、120以上のパラメータを一元管理。AIが最適なタイミングで提案を自動生成する仕組みを構築している。
この仕組みにより、同社では各クライアントに対して月次経営レポートを提供。法令遵守状況のスコアリング、申請可能な補助金・助成金の自動マッチング、業界平均との比較分析などを可視化することで、経営者の意思決定を支援している。
初めて月次レポートを見たとき、自社の立ち位置がこんなにも明確になるのかと驚きました。建設業許可の更新だけでなく、事業承継の課題まで先回りして提案してもらえる。これが本当のコンサルティングだと実感しています。
福岡県・建設業A社代表
現在、同社が管理する許認可件数は年間1,200件以上。更新漏れによる事業停止リスクはゼロを維持しており、信頼性の高さが口コミで広がっている。
「補助金コンサル」から「事業成長支援」へのシフト
近年、士業・コンサルティング業界では補助金申請支援がビジネスモデルの柱となるケースが増えている。しかし高橋氏は、単なる申請代行には限界があると考えている。
「事業再構築補助金やものづくり補助金など、大型補助金の採択率は30〜40%程度。申請が通るかどうかだけに注力するのではなく、補助金を活用した事業計画そのものの実現可能性を高めることが重要です」
同社では、補助金申請の際に必ず3カ年の事業計画策定と月次モニタリングをセットで提案。採択後も伴走支援を継続することで、計画の実行確度を高めている。実際、同社が支援した企業の補助金採択率は68%と業界平均を大きく上回り、さらに採択後の事業計画達成率は82%を記録している。
「補助金は手段であって目的ではありません。本当のゴールは企業の持続的成長。そのために必要なのは、財務・人事・マーケティングまでを含めた統合的な経営支援です」
こうした考えから、同社では社会保険労務士、中小企業診断士、税理士など7つの士業資格保有者を擁するチーム体制を構築。クライアントの課題に応じて最適な専門家がチームを組み、ワンストップで対応する体制を整えている。
地方創生と士業の未来――次世代育成への挑戦
高橋氏が今、最も力を入れているのが次世代士業の育成だ。同社では「士業アカデミー」という独自の研修プログラムを運営し、若手行政書士や司法書士に対して、実務とコンサルティングスキルを体系的に教育している。
「士業業界は高齢化が進んでいます。行政書士の平均年齢は58歳を超えており、このままでは地域の法務インフラが崩壊しかねません。一方で、若手は資格を取っても食べていけない現実がある。この構造的な課題を解決するには、ビジネスモデルそのものの転換が必要です」
士業アカデミーでは、3カ月間のプログラムで許認可実務に加え、財務分析、マーケティング、プレゼンテーションスキルまでを徹底指導。修了生の平均年収は420万円から680万円
へと向上
また、同社では地方自治体との連携も強化。佐賀県と包括連携協定を締結し、県内中小企業向けの無料経営相談窓口を開設。年間500件以上の相談に対応しながら、地域経済の活性化に貢献している。
「東京一極集中の時代は終わりつつあります。地方には優れた技術を持つ企業が数多くありますが、法務やIT活用で後れを取っているケースが多い。私たちのようなハイブリッド型の士業ファームが、地方企業の競争力向上に貢献できると信じています」
今後は、福岡拠点に加えて熊本、長崎への展開を計画。九州全域をカバーするネットワークを構築し、2027年までに年商10億円を目指す。さらに、LBP Cloudを他の士業事務所にもSaaS型で提供するビジネスモデルも検討中だ。
士業の価値は『資格』ではなく『成果』で測られる時代になりました。クライアントの成長に本気でコミットできる士業だけが生き残る。私たちはその先駆けでありたいと思っています。
高橋健太郎氏
法務の専門性とビジネスの実践知を融合させた高橋氏の挑戦は、士業・コンサルティング業界に新たな地平を切り拓いている。