サステナブルな服づくりで業界を変える―リブラン代表・永瀬氏に聞く循環型ファッションの未来
ファッション・アパレル

サステナブルな服づくりで業界を変える―リブラン代表・永瀬氏に聞く循環型ファッションの未来

廃棄ゼロを目指す。アパレル業界に革命を起こすリサイクル技術

株式会社リブラン

永瀬 健介
代表取締役社長 永瀬 健介 株式会社リブラン

年間100万着もの在庫を抱えていた元大手アパレル企業のバイヤーが、繊維リサイクル技術を武器に立ち上げた新興ブランド。サステナブルとビジネスの両立に挑む。

大量廃棄の現場を見て決意した起業

編集部
永瀬社長は大手アパレルで10年以上バイヤーをされていたそうですね。起業に至った経緯を教えてください。
永瀬社長
はい。前職では国内外のブランドを扱う大手セレクトショップで、主にメンズ部門のバイヤーを担当していました。数字的には成功していたキャリアだったのですが、年間で自分が仕入れた商品の約30%が廃棄処分になっているという現実に、次第に疑問を感じるようになったんです。倉庫に山積みになった売れ残りの服を見るたびに、「このシステムは絶対におかしい」と。それで2019年に、繊維リサイクル技術を持つ企業と提携して、リブランを立ち上げました。
編集部
30%というのは業界では普通なのでしょうか。
永瀬社長
むしろ良い方かもしれません。ファストファッションでは40%を超えることも珍しくありません。日本国内だけで年間約50万トンもの衣料品が廃棄されているというデータもあります。シーズンごとに大量生産して、売れなければ焼却処分。この構造を変えない限り、アパレル業界に未来はないと確信しました。
編集部
創業時から現在のビジネスモデルは固まっていたのですか。
永瀬社長
いえ、最初は試行錯誤の連続でした。当初は回収した古着をリメイクして販売するというシンプルなモデルでスタートしたのですが、これだと規模が限定的で。転機になったのは、繊維を化学的に分解して再生する技術を持つベンチャー企業との出会いでした。この技術により、混紡素材でもリサイクルが可能になり、本格的な循環型ファッションの実現が見えてきたんです。現在では自社ブランドの商品の約70%に、この再生繊維を使用しています。

このシステムは絶対におかしい。年間30%が廃棄される現実を変えたかった

── 永瀬社長

テクノロジーとデザインの融合

編集部
リサイクル素材というと、どうしても品質が劣るイメージがあります。その点はどうクリアされていますか。
永瀬社長
それこそが私たちの最大のチャレンジでした。正直に言えば、初期の製品は品質面で課題がありました。再生繊維は通常の生地に比べて強度が弱かったり、染色が難しかったり。でも技術パートナーと2年かけて改良を重ね、今では新品の繊維と遜色ないレベルに到達しています。実際、お客様の多くは言われなければリサイクル素材だと気づきません。
編集部
デザイン面でのこだわりはいかがでしょう。
永瀬社長
ここは絶対に妥協できない部分です。「環境に良いから買ってください」だけでは、一部の意識の高い層にしか届かない。私たちが目指しているのは、純粋にデザインが良くて買いたくなる服、それがたまたまサステナブルだったという状態です。そのため、パリやミラノで活躍していたデザイナーを招聘し、トレンドを押さえたコレクションを展開しています。昨年は東京ファッションウィークにも参加させていただきました。
編集部
価格帯はどのあたりを想定されていますか。
永瀬社長
これも重要なポイントですね。Tシャツで8,000円から、コートで5万円前後という価格設定です。ファストファッションよりは高いですが、いわゆるコンテンポラリーブランドと同等レベル。実はリサイクル素材を使うことで原材料費は抑えられるのですが、技術開発費や小ロット生産のコストがかかるため、この価格帯に落ち着いています。ただ、規模が拡大すればもっと価格を下げられる余地はあります。

純粋にデザインが良いから買いたくなる。それがたまたまサステナブルだった、という状態を目指す

── 永瀬社長

循環型ビジネスモデルの構築

編集部
御社では製品の回収システムも展開されていますね。
永瀬社長
はい。「リブランサークル」という名称で、お客様が着なくなった服を店舗で回収するプログラムを運営しています。当社の製品に限らず、どんなブランドの服でも受け付けています。回収した服は、状態の良いものは古着として再販し、それ以外は繊維にリサイクル。お客様には1着につき500円分のポイントをお渡しして、次回購入時に使っていただけます。開始から2年で約15万着を回収しました。
編集部
他ブランドの製品も回収するというのは珍しいですね。
永瀬社長
本気で循環型社会を実現したいなら、自社製品だけでは不十分です。むしろ業界全体を巻き込んでいく必要がある。最近では同じ志を持つブランドとの協業も増えてきました。例えば、大手デニムブランドとは、彼らが回収したデニムを私たちの技術でリサイクルして新製品を作るというプロジェクトを進めています。競合という関係を超えて、業界全体でサステナビリティに取り組む機運が高まっていると感じます。
編集部
今後の展望について聞かせてください。
永瀬社長
短期的には、直営店を現在の5店舗から20店舗に拡大する計画です。オンライン販売も強化していきます。中期的には、リサイクル技術そのものをライセンス提供するビジネスも視野に入れています。私たちだけが成功しても意味がない。この技術を広く普及させて、業界標準にしていきたい。最終的には「服を捨てる」という概念そのものをなくすことが目標です。10年後、20年後に、「昔は服を大量に捨てていた時代があったらしいよ」と言われるような社会を実現したいですね。
編集部
最後に、同じような志を持つ若い起業家にメッセージをお願いします。
永瀬社長
ビジネスと社会貢献は対立するものではありません。むしろ、社会課題の解決こそが最大のビジネスチャンスだと私は考えています。特にファッション業界には、まだまだ解決すべき課題が山積みです。環境問題だけでなく、労働環境、サプライチェーンの透明性、多様性の尊重など。これらの課題に真剣に取り組むことで、必ず新しい価値が生まれます。理想だけでも、利益だけでもダメ。その両立に挑戦し続けることが、これからの時代を生き抜く鍵だと思います。

10年後には「昔は服を大量に捨てていた」と言われる社会を実現したい

── 永瀬社長
📝 まとめ
・元大手アパレルバイヤーが年間30%の廃棄率に疑問を持ち、繊維リサイクル技術を活用した循環型ファッションブランドを起業
・再生繊維を使用しながらも品質とデザインに妥協せず、新品と遜色ない製品づくりを実現。東京ファッションウィークにも参加
・「リブランサークル」で他ブランド製品も含めて回収し、2年で15万着を循環。業界全体を巻き込む協業も推進
・技術のライセンス提供も視野に、「服を捨てる」概念そのものをなくす社会の実現を目指す

🏢企業情報

会社名 株式会社リブラン
業種 ファッション・アパレル
役職 代表取締役社長
代表者 永瀬 健介
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