地域金融機関のDXを支援するクラウドバンキング基盤の挑戦
金融・フィンテック

地域金融機関のDXを支援するクラウドバンキング基盤の挑戦

地方銀行の未来を創るクラウドインフラで金融の民主化を実現

株式会社ソラシスフィナンシャル

西園寺 健介
代表取締役社長兼CEO 西園寺 健介 株式会社ソラシスフィナンシャル

地域金融機関向けのクラウドバンキングシステムを提供する同社。創業5年で35の金融機関との取引実績を築き、地方創生と金融DXの最前線に立つ。

地域金融機関が抱える構造的課題とクラウド化の必然性

編集部
まず、御社の事業内容と創業の経緯について教えてください。
西園寺社長
弊社は地域金融機関向けのクラウドバンキングプラットフォームを提供しています。具体的には、勘定系システム、チャネル系システム、そして顧客データ分析基盤をクラウド上で一気通貫で提供するSaaS型のサービスです。私自身、大手都市銀行で15年間システム部門を担当した後、地方銀行のCIOを5年間務めた経験があります。その中で、地域金融機関が抱えるシステムコストの重圧と人材不足という二重苦を目の当たりにしました。特に預金量が1兆円以下の第二地銀や信用金庫では、年間IT予算の60%以上がレガシーシステムの保守運用に消えていく実態を見て、これは構造的に変えなければならないと感じたのが創業のきっかけです。
編集部
地域金融機関のシステム課題は以前から指摘されていましたが、なぜ今なのでしょうか。
西園寺社長
三つの大きな環境変化が重なったからです。一つ目は2025年の基幹系システム刷新期限です。多くの地域金融機関で稼働している勘定系システムが、メーカーのサポート終了を迎えます。二つ目は金融庁の「金融機関のITガバナンス等に関する調査」により、クラウド活用が事実上推奨される政策環境になったこと。そして三つ目が、コロナ禍による非対面チャネルへのシフトです。これまで「対面が強み」としてきた地域金融機関も、デジタルチャネルの整備が生き残りの必須条件になりました。実際、70代以上の顧客層でもスマホバンキングの利用率が急上昇しています。
編集部
従来の大手ベンダーのシステムとの違いは何ですか。
西園寺社長
最大の違いは導入期間とコスト構造です。従来型のオンプレミス勘定系システムは、導入に3年から5年、初期投資だけで20億円から50億円かかるのが一般的でした。弊社のクラウドシステムは、標準パッケージであれば6ヶ月で稼働開始でき、初期費用は従来の10分の1以下です。月額のサブスクリプション方式なので、預金量や取引量に応じた柔軟な料金体系を実現しています。また、システムのアップデートも年4回自動的に行われるため、常に最新のセキュリティと機能を利用できます。これは特にIT人材が限られる地域金融機関にとって大きなメリットです。

地域金融機関の年間IT予算の60%以上がレガシーシステムの保守運用に消えている。この構造を変えなければ、地方創生も金融イノベーションも実現できません。

── 西園寺社長

金融規制との向き合い方とセキュリティ設計思想

編集部
金融システムをクラウド化することへの規制面での障壁はなかったのですか。
西園寺社長
正直に申し上げると、創業当初は非常に高いハードルがありました。金融庁の「金融機関等のシステム監査指針」や「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」など、厳格な規制要件をクラウド環境でどう満たすかが最大の課題でした。弊社ではFISC安全対策基準への完全準拠を大前提に、マルチクラウド戦略を採用しています。AWSとMicrosoft Azureの両方を活用し、データセンターも国内の3拠点に分散配置しています。また、金融機関の検査に対応できるよう、すべてのトランザクションログを改ざん不可能な形で7年間保管する仕組みも構築しました。
編集部
サイバーセキュリティ対策はどのように実装しているのでしょうか。
西園寺社長
セキュリティは多層防御の考え方で設計しています。まず、ネットワークレベルではゼロトラストアーキテクチャを採用し、すべてのアクセスを認証・認可します。アプリケーションレベルでは、金融機関ごとに完全に分離されたテナント構造を実装し、データの論理的・物理的分離を保証しています。さらに、AIを活用した異常検知システムを24時間365日稼働させており、通常と異なるアクセスパターンや取引パターンを即座に検知してアラートを発します。実際、昨年度は3件の不正アクセス試行を検知し、被害発生前にブロックすることができました。また、年2回の第三者機関によるペネトレーションテストも実施しており、脆弱性の継続的な改善に努めています。
編集部
金融機関側の理解を得るために苦労されたことはありますか。
西園寺社長
最も苦労したのは「クラウド=不安」という心理的障壁を乗り越えることでした。特に50代以上の経営層や役員の方々には、「大切な顧客データをインターネット上に置くのか」という強い抵抗感がありました。そこで私たちは、まず小規模な信用組合でパイロット導入を実施し、1年間の安定稼働実績を作りました。その信用組合の理事長に、他の金融機関の経営者向けセミナーで体験談を語っていただいたことが転機になりました。「実際に使ってみて、むしろ以前のシステムより安全で便利だった」という現場の声が、何よりも説得力がありました。今では、導入済みの金融機関が次の金融機関を紹介してくれるという好循環が生まれています。

セキュリティは完璧には存在しない。だからこそ、多層防御と継続的な改善のサイクルを回し続けることが金融システムには不可欠なのです。

── 西園寺社長

データ活用による地域金融機関の新たな価値創造

編集部
単なるシステムのクラウド化を超えた付加価値について教えてください。
西園寺社長
弊社のプラットフォームの真髄はデータ活用基盤にあります。従来の勘定系システムは「正確に記帳する」ことが主目的でしたが、私たちのシステムは「データから洞察を得る」ことを重視しています。具体的には、顧客の取引データを匿名化・統計化した上で、AIによる分析を行い、地域経済の動向予測や個別企業の経営状況の早期警戒などに活用できます。例えば、ある地方銀行では、飲食業の売上データから地域の観光動向を可視化し、それを地元自治体の観光政策にフィードバックするという取り組みを始めています。金融機関が単なる「お金の貸し借り」から、「地域経済の情報インフラ」へと進化するお手伝いができていると自負しています。
編集部
中小企業向けの融資判断などにもデータ活用は進んでいますか。
西園寺社長
まさにそこが大きな変革ポイントです。従来の融資審査は、決算書と担保評価が中心でしたが、これは過去の情報に基づく判断です。弊社のシステムでは、取引先企業の預金口座の動き、仕入れ・販売のサイクル、従業員給与の支払い状況など、リアルタイムのキャッシュフロー情報を分析できます。これにより、決算書上は赤字でも実態としては健全な企業を見極めることが可能になります。実際、ある信用金庫では、この仕組みを活用して創業3年未満のスタートアップ企業への融資実行率が2倍になりました。担保や保証人に頼らない、事業性評価に基づく融資の実現です。これは金融庁が推進する方向性とも完全に一致しています。
編集部
今後の展開と、日本の地域金融が目指すべき姿について教えてください。
西園寺社長
短期的には、今年度中に契約金融機関を50に増やすことが目標です。また、来年度からはAPI連携基盤を本格稼働させ、地域のフィンテック企業や事業者とのエコシステム構築を支援します。例えば、地域通貨やポイントシステム、BtoBの決済ネットワークなどを、金融機関を中心に展開できるようになります。中長期的には、東南アジアの地域金融機関への展開も視野に入れています。日本の地域金融機関が直面している課題は、実は世界中の地域金融で共通しているからです。最終的に私が目指すのは、「金融が地域の課題解決のプラットフォームになる」という世界観です。少子高齢化、地方創生、事業承継など、地域には解決すべき課題が山積していますが、金融機関はそのすべてに接点を持っています。テクノロジーの力で金融機関の可能性を最大化し、地域社会に貢献する。それが私たちの使命だと考えています。

金融機関は「お金の貸し借り」から「地域経済の情報インフラ」へ進化する。それを支えるのがクラウドとデータの力です。

── 西園寺社長
📝 まとめ
・地域金融機関向けクラウドバンキング基盤を提供、導入期間を従来の6分の1に短縮しコストも10分の1以下に削減
・FISC安全対策基準完全準拠のマルチクラウド戦略とゼロトラストアーキテクチャで金融レベルのセキュリティを実現
・AIによるデータ分析基盤で地域経済の可視化や事業性評価に基づく融資判断を支援
・創業5年で35の金融機関と契約、金融機関を地域課題解決のプラットフォームへ進化させることを目指す

🏢企業情報

会社名 株式会社ソラシスフィナンシャル
業種 金融・フィンテック
役職 代表取締役社長兼CEO
代表者 西園寺 健介
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