物流DXと地域インフラの両立で描く、新時代の配送ネットワーク戦略
物流・サプライチェーン

物流DXと地域インフラの両立で描く、新時代の配送ネットワーク戦略

ラストワンマイルを制する者が、次世代物流を制す

株式会社関東流通システムズ

武藤 健一郎
代表取締役社長 武藤 健一郎 株式会社関東流通システムズ

創業45年の老舗物流企業が挑む、テクノロジーと人の融合による配送革命。人手不足と環境問題を同時解決する独自のサプライチェーン構想とは。

デジタル化と現場力の融合による物流改革

編集部
武藤社長が2020年に社長就任されてから、積極的なDX推進を進めていらっしゃいますね。老舗企業でのデジタル化には抵抗もあったのではないでしょうか。
武藤社長
おっしゃる通り、当初は現場からの反発もありました。弊社は父が創業して45年、長年アナログな手法で業務を回してきた企業です。しかし物流業界は今、2024年問題をはじめとする構造的な課題に直面しています。ドライバーの高齢化、人手不足、環境規制の強化など、従来のやり方では立ち行かなくなることは明白でした。私が就任時に掲げたのは「テクノロジーで効率化し、人は人にしかできない仕事に集中する」という方針です。AIによる配送ルート最適化、IoTセンサーによる荷物追跡、デジタル伝票化など、段階的に導入を進めました。
編集部
現場の方々の意識を変えるために、具体的にどのような取り組みをされたのですか。
武藤社長
まず経営陣が率先してシステムを使いこなす姿を見せることから始めました。私自身、配送センターに週2回は必ず足を運び、タブレット端末を使いながらドライバーと一緒に新システムを学びました。また、60代のベテランドライバーを「デジタルアンバサダー」に任命し、同世代への教育役を担ってもらったんです。彼らは現場の言葉で説明できますから、IT部門の若手が説明するより遥かに浸透が早かった。導入から1年で、配送効率は平均18%向上、残業時間は月平均23時間削減できました。
編集部
数字として明確な成果が出ているのは素晴らしいですね。一方で、投資コストも相当かかったのでは。
武藤社長
初期投資として約3億円を投じました。中小企業にとっては決して小さくない金額です。ただ、これを「コスト」ではなく「未来への投資」と位置づけました。実際、システム導入2年目で燃料費削減や作業効率化により年間約8,000万円のコスト削減を実現し、4年弱で投資回収できる見込みです。さらに重要なのは、これにより若手の採用が劇的に改善したこと。「最新システムを使える物流会社」として求職者からの評価が上がり、応募数が前年比2.3倍になりました。

テクノロジーは人を排除するためではなく、人の能力を最大化するためにある

── 武藤社長

地域密着型ハブ&スポークモデルの構築

編集部
御社は昨年から「地域マイクロハブ」という独自の配送拠点網を展開されていますね。この構想はどのような背景から生まれたのでしょうか。
武藤社長
大手物流企業は都市部の大規模拠点から配送する効率重視のモデルですが、地方や郊外では必ずしも最適ではありません。私たちは関東圏に基盤を持つ中堅企業として、地域に根ざした物流ネットワークこそが差別化要因になると考えました。具体的には、各市町村に50〜100平米程度の小規模拠点「マイクロハブ」を設置し、そこを起点に半径5km圏内をきめ細かく配送するモデルです。現在、埼玉・千葉・茨城エリアで23拠点を展開しています。
編集部
小規模拠点を多数展開するのは、かえってコスト増になりませんか。
武藤社長
一見そう思えますが、実は逆なんです。マイクロハブは既存の商店街の空き店舗や閉校した学校施設などを活用しているため、不動産コストを大幅に抑えられます。また、配送距離が短くなることで燃料費削減、一人のドライバーが1日に回れる配送件数も1.5倍に増加しました。さらに地域の主婦やシニアを短時間配送スタッフとして雇用することで、人材確保と地域貢献を両立できています。最も大きいのは再配送率の劇的な低下です。地域に密着した配送員が顔の見える関係を築くことで、再配送率が従来の15%から6%まで下がりました。
編集部
地域雇用という社会的価値と、ビジネスとしての効率性を両立されているわけですね。今後の展開はいかがですか。
武藤社長
現在は自社の配送業務が中心ですが、このマイクロハブを地域の共同配送インフラとして開放していく構想があります。地元の商店、農家、小規模EC事業者などが共同でこの拠点を使えるプラットフォームにする。すでに3つの拠点で実証実験を始めており、地域の食品スーパー2社、農産物直売所、そして個人のハンドメイド作家さんなど12事業者が参加しています。物流を「シェア」することで、中小事業者でも大手に負けない配送サービスを提供できる。これが地方創生にもつながると信じています。

物流インフラは道路や鉄道と同じ社会資本。共有することで地域全体が強くなる

── 武藤社長

サステナビリティと収益性の両立へ

編集部
環境対応についても力を入れていらっしゃいますが、具体的な取り組みを教えてください。
武藤社長
物流業界はCO2排出量が多い業界として注目されています。弊社では2030年までにCO2排出量50%削減、2040年カーボンニュートラル達成を目標に掲げています。現在、配送車両の30%をEVまたはハイブリッド車に切り替えました。マイクロハブモデルでは配送距離が短いため、EVの航続距離の制約も問題になりません。また、包装資材の見直しも進めており、リユース可能な配送ボックスを導入したことで、段ボール使用量を年間約180トン削減できました。
編集部
EVへの切り替えは車両コストが高いという課題がありますが、どう対応されていますか。
武藤社長
確かに初期投資は大きいですが、トータルコストで見ると3〜4年で差額を回収できます。燃料費が大幅に下がることに加え、メンテナンスコストも低い。さらに国や自治体の補助金も活用しています。また、企業イメージの向上も見逃せません。環境配慮を重視する企業からの引き合いが増えており、昨年は大手小売チェーン3社から新規に配送業務を受託しました。ESG投資の観点からも、環境対応は今や「コスト」ではなく「競争力の源泉」なんです。
編集部
物流業界全体の課題として「2024年問題」がありますが、御社ではどう対応されていますか。
武藤社長
ドライバーの労働時間規制強化は業界全体の大きな課題です。弊社では「時間あたり生産性」を徹底的に追求することで対応しています。先ほどお話したDXによる効率化、マイクロハブによる配送距離短縮、そして配送時間指定の細分化による不在率低下。これらを組み合わせることで、労働時間を削減しながら売上は維持できています。また、ドライバーの処遇改善にも注力しており、業界平均より15%高い給与水準を実現しました。人材確保こそが最大の経営課題ですから、ここへの投資は惜しみません。
編集部
最後に、今後の展望をお聞かせください。
武藤社長
物流は単なる「モノを運ぶ」業界ではなく、社会インフラそのものです。私たちは「地域に根ざした、持続可能な物流プラットフォーム」の構築を目指しています。5年後には関東全域で100拠点のマイクロハブネットワークを完成させ、さらに他地域の物流企業とも連携して全国ネットワーク化していきたい。テクノロジーを活用しながらも、最後は「人と人とのつながり」を大切にする。デジタルとアナログ、効率と温かみ、この両立こそが私たちの目指す物流の未来像です。地域の皆さまから「関東流通があって良かった」と言っていただける存在になることが、私の最大の目標ですね。

物流の使命は、確実に届けることだけでなく、地域と地域、人と人をつなぐこと

── 武藤社長
📝 まとめ
・AIやIoTを活用したDX推進により、配送効率18%向上、残業時間23時間削減を実現
・地域の空き店舗等を活用した「マイクロハブ」モデルで、配送効率化と地域雇用創出を両立
・2030年CO2排出量50%削減を目標に、EV導入や包装資材削減などサステナビリティ経営を推進
・物流インフラの共同利用プラットフォーム化により、中小事業者支援と地方創生に貢献

🏢企業情報

会社名 株式会社関東流通システムズ
業種 物流・サプライチェーン
役職 代表取締役社長
代表者 武藤 健一郎
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