地方発、冷凍餃子で全国へ。町工場から年商30億円企業への挑戦
飲食・フード

地方発、冷凍餃子で全国へ。町工場から年商30億円企業への挑戦

「冷凍でも美味しい」を追求し、食品製造の常識を変える

株式会社味彩工房

西村 健太郎
代表取締役社長 西村 健太郎 株式会社味彩工房

栃木県の小さな食品工場から始まった味彩工房。独自の急速冷凍技術と素材へのこだわりで、業務用から家庭用まで幅広く展開し、創業15年で年商30億円規模へと成長を遂げた。

町工場からの出発と、冷凍技術への挑戦

編集部
西村社長は元々、大手食品メーカーの研究職だったと伺いました。なぜ独立して冷凍餃子の製造を始めようと思われたのですか?
西村社長
前職では10年間、冷凍食品の開発に携わっていました。その中で常に感じていたのは、「冷凍技術さえ極めれば、作りたての美味しさを全国に届けられる」という可能性です。特に餃子は冷凍との相性が良い食品なのに、当時は「冷凍餃子は生餃子に劣る」という先入観が強かった。それなら自分で理想の冷凍餃子を作ろうと、2009年に栃木県で創業しました。最初は従業員3人の小さな工場でしたね。
編集部
創業当初はどのような苦労がありましたか?
西村社長
資金面もそうですが、何より販路の開拓に苦労しました。大手メーカー出身とはいえ、実績のない町工場の冷凍餃子を扱ってくれる業者は簡単には見つかりませんでした。そこで最初の2年間は、地元の居酒屋や中華料理店を一軒一軒回って、サンプルを配り歩きました。「一度食べてもらえれば分かってもらえる」という確信があったので、とにかく試食してもらうことに注力しましたね。
編集部
転機となった出来事はありますか?
西村社長
創業3年目に、東京の大手居酒屋チェーンから業務用として採用されたことです。これは本当に大きかった。担当バイヤーの方が「この餃子、本当に冷凍なのか」と驚いてくださって。その後、口コミで他の飲食チェーンからも引き合いが来るようになり、一気に生産体制を拡大することになりました。この時期に独自の「三段階急速冷凍法」を確立できたことも大きかったですね。

冷凍技術さえ極めれば、作りたての美味しさを全国に届けられる

── 西村社長

素材へのこだわりと、差別化戦略

編集部
御社の餃子の特徴について詳しく教えていただけますか?
西村社長
大きく分けて3つのこだわりがあります。まず素材の選定。キャベツは契約農家から仕入れた国産のみを使用し、豚肉も栃木県産を中心に厳選しています。二つ目が製法。餡を包んでから焼き上げるまでの時間を徹底的に短縮し、鮮度が高い状態で急速冷凍をかけます。三つ目が独自開発した冷凍技術。マイナス40度で一気に凍らせることで、細胞破壊を最小限に抑え、解凍後も水分が逃げにくい状態を実現しています。
編集部
冷凍食品市場は大手企業がひしめく中で、どのように差別化を図っているのでしょうか?
西村社長
私たちは「小回りの利く専門メーカー」というポジションを意識しています。大手にはできない小ロット対応や、クライアントごとのカスタマイズに強みがあります。例えば、ある居酒屋チェーンには「ニンニク控えめ」、別のレストランには「野菜多め」といった具合に、それぞれの要望に応じた餃子を製造しています。また、家庭用では「地域限定フレーバー」も展開していて、九州では明太子入り、北海道では味噌味など、地域性を活かした商品開発も好評です。
編集部
原材料費の高騰など、経営環境は厳しいと思いますが、どう対応されていますか?
西村社長
確かに厳しい状況ですが、安易に価格転嫁や品質を落とすことはしません。その代わり、生産効率の向上や、契約農家との連携強化でコスト吸収に努めています。昨年は野菜の端材を活用した新商品「野菜たっぷり餃子」を開発し、フードロス削減とコスト削減を両立させました。また、自社で焼成ラインも持つことで、「焼き餃子」「水餃子」「揚げ餃子」と商品バリエーションを増やし、収益性を高めています。

安易に価格転嫁や品質を落とすことはしません

── 西村社長

地方企業としての成長戦略と未来展望

編集部
栃木という地方に本社を置くことのメリット・デメリットをどう感じていますか?
西村社長
デメリットは正直、人材採用の難しさです。特に若い世代は首都圏志向が強いので、優秀な人材の確保には工夫が必要です。ただ、メリットの方が圧倒的に大きいと感じています。地価や人件費が都市部より抑えられること、良質な農産物の産地に近いこと、そして何より地域との強い結びつきがあります。地元の農家さんや取引先との信頼関係は、15年かけて築いてきた財産です。また、従業員の定着率も高く、ベテラン職人が技術を継承できる環境があります。
編集部
今後の事業展開について教えてください。
西村社長
短期的には海外展開を視野に入れています。特にアジア市場では日本の冷凍食品への評価が高く、すでに台湾・タイからオファーをいただいています。中期的には、餃子以外の冷凍食品ラインナップを拡充したいですね。シュウマイや春巻きなど、当社の冷凍技術を活かせる商品は他にもたくさんあります。長期的には、「冷凍食品=手抜き」というイメージを変えたい。冷凍技術は食品を美味しく保存する素晴らしい技術であり、忙しい現代人の強い味方です。その価値をもっと多くの人に伝えていきたいですね。
編集部
最後に、西村社長が経営で最も大切にしていることを教えてください。
西村社長
「現場主義」です。私は今でも週に2回は工場に入り、製造ラインをチェックしています。経営者が現場から離れてしまうと、商品の質は必ず落ちます。また、従業員とのコミュニケーションも重視しています。月に一度は全従業員と食事をしながら話す機会を設けていて、現場の声を直接聞くようにしています。あとは「諦めない心」ですね。創業当初、銀行から融資を断られたことも、大口契約が流れたことも何度もありました。でも、自分が作る餃子の美味しさを信じて諦めなかったから今がある。これからも、その姿勢は変えずにいきたいと思っています。

冷凍技術は食品を美味しく保存する素晴らしい技術。その価値をもっと多くの人に伝えていきたい

── 西村社長
📝 まとめ
・元大手食品メーカー研究職から独立し、独自の急速冷凍技術で差別化
・契約農家との連携による国産素材へのこだわりと、小ロット対応が強み
・地方立地を活かしたコスト管理と地域との信頼関係構築
・海外展開と商品ラインナップ拡充で、年商50億円を目指す

🏢企業情報

会社名 株式会社味彩工房
業種 飲食・フード
役職 代表取締役社長
代表者 西村 健太郎
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