AIと独自のオルタナティブデータを活用した与信モデルで、中小企業や個人事業主の資金調達課題を解決。創業5年で融資実行額300億円を突破したフィンテックベンチャーの戦略とは。
金融包摂という社会課題への挑戦
編集部
御社は「AIスコアリング」を活用した融資プラットフォームを展開されていますが、創業の経緯をお聞かせください。
水野CEO
私は以前、大手銀行で法人営業を担当していました。その際、財務諸表だけでは評価しきれない優良な中小企業が数多く存在することに気づいたんです。特に創業間もない企業や、デジタル化が進んでいない事業者は、従来の信用評価では融資を受けられないケースが多い。彼らには事業の実態や成長ポテンシャルがあるのに、それを数値化できないために資金調達の機会を失っている。この構造的な問題を解決したいと考えたのが起点です。2019年に創業し、現在では累計融資実行額が300億円を超えるまでに成長しました。
編集部
「オルタナティブデータ」という言葉が出ましたが、具体的にどのようなデータを活用されているのでしょうか。
水野CEO
従来の金融機関が見る財務諸表や信用情報に加えて、ECサイトの売上推移、SNSでの評判、Webサイトのトラフィック、電子決済データ、さらには物流データなども分析対象にしています。例えば、飲食店であれば予約サイトでのレビュー数や評価推移、小売業であればPOSデータから見える販売トレンドなど、リアルタイムに近い事業活動のデータを収集・分析します。これらのデータをAIでスコアリングすることで、従来は「見えなかった信用力」を可視化できるんです。
編集部
データ収集における顧客の理解はスムーズに得られましたか?
水野CEO
当初は抵抗感もありました。「なぜそんなデータまで必要なのか」という質問も多かったですね。ただ、データ提供によって審査スピードが劇的に速くなることを実感していただくと、協力的になっていただけます。従来の銀行融資では審査に数週間かかるところ、私たちは最短で48時間以内に融資実行まで進められます。データ連携のメリットを体感してもらうことが、信頼構築の第一歩でした。また、データの取り扱いについては金融庁のガイドラインを遵守し、セキュリティ面も徹底しています。
財務諸表では見えない「事業の実態」を、データで可視化する
── 水野CEO
テクノロジーと人の目を融合した審査モデル
編集部
AIによるスコアリングとはいえ、完全な自動化ではないと伺っています。人間の判断はどう組み込まれているのでしょうか。
水野CEO
これは非常に重要なポイントです。AIはあくまで「判断材料の高度化」を担うツールであり、最終的な融資判断は必ず人間が行います。AIスコアリングで定量的な評価を行いつつ、経験豊富な審査担当者が事業計画の妥当性や経営者のビジョン、業界特性などを総合的に判断する。この「テクノロジーと人の目のハイブリッド」が私たちの強みです。特に新規事業や業界転換期にある企業は、過去データだけでは評価できません。そこに人間の洞察力が不可欠なんです。
編集部
AIモデルの精度向上のために、どのような取り組みをされていますか。
水野CEO
継続的な学習と改善がカギです。融資実行後の返済実績データを蓄積し、予測精度と実際の返済パフォーマンスの乖離を分析しています。現在、私たちのモデルの予測精度は85%以上を維持しており、不良債権比率も業界平均を下回っています。また、業種別・規模別にモデルをチューニングすることで、それぞれの特性に合わせた評価を実現しています。飲食業と製造業では重視すべきデータポイントが異なりますから。
編集部
規制対応についてはいかがでしょうか。フィンテック企業と金融規制のバランスは難しいと思いますが。
水野CEO
金融庁との対話は創業当初から重視してきました。革新的であることと、コンプライアンスを守ることは両立できると考えています。むしろ、規制当局との健全な関係が、長期的な事業成長には不可欠です。私たちは貸金業登録を取得し、定期的に監査を受けています。また、業界団体にも積極的に参加し、フィンテック業界全体の健全な発展にも貢献したいと考えています。新しい技術を使うからこそ、透明性と説明責任を重視する姿勢が重要だと思います。
AIはツール、最終判断は必ず人間が行う。それが責任ある金融の形
── 水野CEO
地方創生から東南アジア展開まで──次なる成長戦略
編集部
今後の事業展開について、特に注力される領域を教えてください。
水野CEO
大きく3つあります。まず地方の中小企業支援です。地方銀行との協業を進めており、私たちのスコアリング技術を地銀のプラットフォームに組み込む取り組みを始めています。地方には素晴らしい技術や製品を持つ企業が多いのに、資金調達の選択肢が限られている。そこに私たちの技術で貢献したい。次に個人事業主・フリーランス向けサービスの拡充です。働き方が多様化する中、従来の雇用形態を前提とした金融サービスでは対応しきれない層が増えています。最後に東南アジア市場への展開です。すでにベトナムで実証実験を開始しており、2025年中には本格展開を予定しています。
編集部
東南アジア展開の狙いは何でしょうか。
水野CEO
東南アジアは金融包摂のニーズが日本以上に高い市場です。銀行口座を持たない人口が多く、中小企業の資金調達環境も整っていません。一方で、スマートフォンの普及率は高く、デジタルデータは豊富に存在します。つまり、私たちのビジネスモデルが最も活きる環境なんです。現地の金融機関やフィンテック企業とのパートナーシップも進んでおり、グローバルな金融プラットフォームの構築を目指しています。日本で培った技術とノウハウを、世界の金融包摂に役立てたいですね。
編集部
最後に、水野さんが考える「金融の未来」について聞かせてください。
水野CEO
金融は本来、事業や夢を実現するための「手段」であるべきです。しかし現実には、金融アクセスそのものがハードルになっている。私たちが目指すのは、誰もが公正に評価され、適切な金融サービスにアクセスできる世界です。テクノロジーはそれを実現する強力なツールですが、最終的には「人」が中心です。データとAIで信用を民主化し、挑戦する人を支える金融インフラを作りたい。それが私たちのミッションであり、次の10年で実現したいビジョンです。金融業界はまだまだ変革の余地があります。既存の枠組みにとらわれず、社会課題解決につながるイノベーションを追求し続けたいと思います。
金融アクセスを民主化し、挑戦する全ての人を支えるインフラを作る
── 水野CEO
まとめ
・AIとオルタナティブデータを活用した与信モデルで、従来評価されにくかった中小企業・個人事業主への融資を実現
・テクノロジーと人間の判断を融合したハイブリッド審査により、スピードと精度を両立
・地方創生、フリーランス支援、東南アジア展開の3軸で事業拡大を推進
・金融包摂を通じた社会課題解決を企業ミッションに掲げ、データで信用を民主化する未来を目指す
・テクノロジーと人間の判断を融合したハイブリッド審査により、スピードと精度を両立
・地方創生、フリーランス支援、東南アジア展開の3軸で事業拡大を推進
・金融包摂を通じた社会課題解決を企業ミッションに掲げ、データで信用を民主化する未来を目指す
企業情報
| 会社名 | 株式会社フィナンシャルブリッジ |
|---|---|
| 業種 | 金融・フィンテック |
| 役職 | 代表取締役CEO |
| 代表者 | 水野 拓哉 |