地方の医療過疎地域に特化したオンライン診療プラットフォームを展開する株式会社メディカルブリッジ。在宅医療との連携で、高齢者の「通院負担」を大きく軽減している。
地方医療の課題とデジタルソリューション
編集部
まず、メディカルブリッジの事業内容について教えていただけますか。
相川CEO
私たちは地方の医療過疎地域に特化したオンライン診療プラットフォーム「MediBridge」を開発・運営しています。単なるオンライン診療だけでなく、訪問看護ステーションや薬局、介護施設とも連携して、患者さんの医療・介護データを一元管理できる統合型のシステムです。現在、全国17県、約320の医療機関に導入いただいており、月間のオンライン診療件数は約8,000件に達しています。特に75歳以上の高齢者の利用が全体の68%を占めていることが特徴です。
編集部
なぜ地方の医療過疎地域に焦点を当てたのでしょうか。
相川CEO
私自身が新潟県の山間部の出身で、祖母が通院に片道2時間かけていた経験があります。冬場は雪で道が閉ざされ、定期診療を受けられないこともありました。日本全国で無医地区は約600地区、準無医地区を含めると1,000地区以上存在します。そこに住む約13万人の方々が、適切な医療アクセスを得られていない現実があります。都市部のオンライン診療は利便性向上が目的ですが、地方では「命を守るインフラ」なんです。この課題を解決したいという強い想いから起業しました。
編集部
高齢者にデジタルツールを使ってもらうのは難しくありませんか。
相川CEO
おっしゃる通り、これが最大の課題でした。そこで私たちは「デジタルサポーター制度」を導入しています。地域の訪問看護師や介護ヘルパーの方々に、簡単な操作サポートをお願いする仕組みです。また、UIは極限までシンプルにし、タブレットの電源を入れるだけで自動的に診療画面に接続される設計にしました。実際、導入後3ヶ月での利用定着率は87%と、当初の予想を大きく上回っています。高齢者の方々も「これなら病院に行かなくて済む」と喜んでくださっています。
地方のオンライン診療は利便性向上ではなく、「命を守るインフラ」です
── 相川CEO
在宅医療との統合がもたらす価値
編集部
在宅医療との連携について、具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか。
相川CEO
「ケアコーディネーション機能」が核心です。例えば、オンライン診療で医師が患者さんの状態変化を察知したら、即座に訪問看護ステーションに情報が共有され、必要に応じて臨時訪問が手配されます。逆に、訪問看護師が患者宅でバイタルデータを測定すると、それがリアルタイムで医師のダッシュボードに反映される仕組みです。さらに処方箋は連携薬局に自動送信され、薬剤師が服薬指導をオンラインで行った後、薬を宅配します。このワンストップの流れが、患者さんの通院回数を平均で年間12回削減しています。
編集部
医療従事者側のメリットはどこにあるのでしょうか。
相川CEO
最も大きいのは業務効率化と働き方改革です。従来、在宅医療では医師・看護師・薬剤師・介護士がバラバラに情報を管理し、電話やFAXで連絡を取り合っていました。これが膨大な事務作業を生んでいたんです。私たちのシステムでは全ての情報が一元化され、コミュニケーションもチャット機能で完結します。ある在宅医療クリニックでは、導入後に事務作業時間が40%削減され、その分を患者さんとの対話時間に充てられるようになったと報告を受けています。医療の質を上げながら、医療従事者の負担も減らせる。これこそDXの本質だと考えています。
編集部
データ連携におけるセキュリティ面の対策は。
相川CEO
医療情報を扱う以上、セキュリティは最優先事項です。まず、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に完全準拠しています。データは全てAES-256bitで暗号化し、AWS上の国内リージョンで管理。さらに三省ガイドラインに基づく第三者認証も取得しました。アクセス権限も職種・役割ごとに細かく設定でき、全てのアクセスログが記録されます。加えて、年2回の外部セキュリティ監査と、月1回の内部監査を実施しています。「便利だけど危険」ではなく、「便利で安全」なシステムを目指しています。
医療の質を上げながら医療従事者の負担も減らす。これこそDXの本質です
── 相川CEO
今後の展望と社会実装への道筋
編集部
現在の課題や、今後取り組みたいことは何でしょうか。
相川CEO
最大の課題は診療報酬制度との整合性です。オンライン診療の診療報酬は対面診療より低く設定されており、医療機関にとって経営的なインセンティブが弱い現状があります。ただ、2024年の診療報酬改定で一部改善されましたし、政府も「デジタル田園都市国家構想」の中で遠隔医療を重点分野に位置づけています。私たちも厚労省や関係学会と対話を重ね、エビデンスを示しながら、適正な評価体系の構築に向けて働きかけています。また、今後は慢性疾患管理に特化したAI機能も実装予定です。血圧や血糖値のトレンドから重症化リスクを予測し、早期介入できるシステムを開発中です。
編集部
海外展開の可能性についてはいかがでしょうか。
相川CEO
実は既に東南アジアからの引き合いが来ています。タイやベトナムも日本と同様に急速な高齢化と地方の医療過疎という課題を抱えています。特にタイでは来年、パイロットプロジェクトを開始する予定です。ただし、各国で医療制度や保険システムが異なるため、現地パートナーとの協業が不可欠です。日本で培ったノウハウを、アジアの医療課題解決にも活かしていきたいですね。グローバル展開を通じて、日本発の医療DXモデルを世界標準にすることが私の大きな夢の一つです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
相川CEO
医療DXは決して「人間の温かさ」を奪うものではありません。むしろ、テクノロジーが雑務を引き受けることで、医療従事者が患者さん一人ひとりと向き合う時間を増やせるんです。地方の高齢者の方々が、住み慣れた家で安心して暮らし続けられる社会。医師や看護師が疲弊せず、やりがいを持って働ける環境。その両立を実現するのが私たちの使命です。「医療アクセスは基本的人権」という信念のもと、これからも地域医療の未来を切り拓いていきます。医療・ヘルスケア分野に関心のある方、ぜひ一緒にこの挑戦に参加していただきたいです。
まとめ
・地方医療過疎地域に特化したオンライン診療プラットフォーム「MediBridge」を展開し、月間8,000件の診療実績
・訪問看護、薬局、介護施設と連携した統合型システムで、患者の通院回数を年間平均12回削減
・高齢者向けに「デジタルサポーター制度」を導入し、利用定着率87%を達成
・診療報酬制度の改善に向けた働きかけと、AI活用による慢性疾患管理システムを開発中。東南アジアへの展開も視野
・訪問看護、薬局、介護施設と連携した統合型システムで、患者の通院回数を年間平均12回削減
・高齢者向けに「デジタルサポーター制度」を導入し、利用定着率87%を達成
・診療報酬制度の改善に向けた働きかけと、AI活用による慢性疾患管理システムを開発中。東南アジアへの展開も視野
企業情報
| 会社名 | 株式会社メディカルブリッジ |
|---|---|
| 業種 | 医療・ヘルスケア |
| 役職 | 代表取締役CEO |
| 代表者 | 相川 恵理 |