「起業家を信じ抜く」が原点――VCファーム代表が語る、日本のスタートアップ投資の未来
スタートアップ・VC

「起業家を信じ抜く」が原点――VCファーム代表が語る、日本のスタートアップ投資の未来

信念を貫く投資哲学が、次世代起業家を育てる

株式会社ホライズンベンチャーズ

緒方 拓人
代表取締役 マネージングパートナー 緒方 拓人 株式会社ホライズンベンチャーズ

創業8年で50社超への投資実績を持つ独立系VCファーム。「起業家ファースト」を掲げる代表が、日本のスタートアップエコシステムの課題と可能性について語る。

投資家として最も大切にしている「起業家との向き合い方」

編集部
緒方さんは2016年にホライズンベンチャーズを創業され、これまで50社以上のスタートアップへ投資されてきました。投資家として最も大切にしている価値観は何でしょうか。
緒方代表
一言で言えば、「起業家を信じ抜く」ということです。VCの仕事は資金を提供するだけではなく、起業家が最も孤独で苦しい時期に寄り添い、彼らの可能性を信じ続けることだと考えています。私自身、起業家としての挫折経験があるからこそ、数字だけでは測れない「人」の部分を重視しています。事業計画が完璧でも、創業者の情熱や粘り強さがなければ成功しない。逆に、プランが未熟でも、圧倒的な熱量と学習能力がある起業家には賭ける価値があると思っています。
編集部
「人を見る」という点で、具体的にどのようなポイントを重視されていますか。
緒方代表
まず「Why」の深さですね。なぜその事業をやるのか、なぜ自分がやらなければならないのか。ここに明確な答えと情熱がある起業家は強い。次に「失敗からの学習能力」。これまでどんな壁にぶつかり、どう乗り越えてきたか。その過程で何を学んだかを聞けば、その人の成長曲線が見えてきます。最後に「チームを巻き込む力」。一人で全てをやり遂げることはできません。優秀な仲間を惹きつけ、同じ方向を向かせる力があるかどうかは非常に重要です。
編集部
投資先とのコミュニケーションで心がけていることはありますか。
緒方代表
「伴走者であること」を常に意識しています。投資家が前に出すぎると、起業家の主体性を奪ってしまう。かといって放任すれば、必要なタイミングでサポートできない。絶妙な距離感を保ちながら、彼らが本当に困った時には即座に動ける体制を整えています。月に一度は必ず対面で会い、数字の話だけでなく、メンタル面のケアも含めて話をします。起業家のメンタルヘルスは、事業の成否に直結しますから。

事業計画が完璧でも、創業者の情熱と粘り強さがなければ成功しない

── 緒方代表

日本のスタートアップエコシステムの課題と変化

編集部
日本のスタートアップ環境は、この数年でどのように変化していると感じますか。
緒方代表
劇的に変わりました。私が起業した2016年頃と比べると、資金調達の環境は格段に改善されています。政府のスタートアップ支援策も充実し、大企業のCVCも増えた。優秀な人材が大企業からスタートアップへ転職する動きも加速しています。ただ、課題も山積みです。最も大きいのは「Exit環境の未成熟さ」ですね。IPOまでの道のりが長く、M&Aが活発でないため、投資家もリスクを取りにくい。結果的に、起業家が大きなチャレンジをしづらい構造になっています。
編集部
Exit環境の改善には何が必要だとお考えですか。
緒方代表
大企業側の意識改革が不可欠です。日本企業は自前主義が強く、M&Aを「買収」ではなく「敗北」と捉える文化がまだ残っている。でも、アメリカを見れば分かる通り、大企業がスタートアップを積極的に買収することで、エコシステム全体が活性化します。最近は良い兆候もあって、事業シナジーを重視した戦略的M&Aが増えてきました。あとは、セカンダリーマーケットの整備も重要ですね。創業者や初期投資家が一部株式を売却できる仕組みがあれば、長期的な事業構築がしやすくなります。
編集部
政府のスタートアップ支援策については、どう評価されていますか。
緒方代表
方向性は正しいと思います。特に「スタートアップ育成5か年計画」は野心的で評価しています。ただ、制度設計が現場の実態とズレている部分もある。例えば、税制優遇は確かにありがたいのですが、手続きが煩雑すぎて活用しづらい。もっとシンプルで使いやすい制度設計が求められます。あとは、失敗に対する寛容さを社会全体で育む必要がありますね。一度失敗したら二度と立ち上がれないような空気では、誰もリスクを取れません。

大企業がスタートアップを積極的に買収することで、エコシステム全体が活性化する

── 緒方代表

これから投資したい領域と、起業家へのメッセージ

編集部
今後、特に注目している投資領域はありますか。
緒方代表
3つあります。一つ目は「ディープテック」。日本は基礎研究では世界トップレベルですが、それを事業化する力が弱い。大学発スタートアップを支援し、研究成果を社会実装していきたい。二つ目は「地方創生×テクノロジー」。東京一極集中を是正し、地方に新しい産業と雇用を生み出すスタートアップを応援したい。三つ目は「社会課題解決型ビジネス」。気候変動、少子高齢化、教育格差など、日本が抱える課題は山積みです。これらをビジネスとして解決するスタートアップには大きな可能性があります。
編集部
これから起業を考えている人へ、どんなアドバイスをされますか。
緒方代表
まず、「小さく始めて、早く失敗すること」です。完璧なプランを練るより、仮説を立てて即座に検証する。失敗から学び、ピボットする。このサイクルを高速で回せる人が成功します。次に、「素直さと学習意欲」を持つこと。起業家は全知全能である必要はありません。むしろ、自分の弱みを認め、周囲から学ぶ姿勢がある人のほうが成長します。最後に、「長期的な視点」を持つこと。スタートアップは短距離走ではなくマラソンです。一時的な成功や失敗に一喜一憂せず、10年後のビジョンに向かって走り続けられるかが重要です。
編集部
最後に、日本のスタートアップエコシステムの未来について、どうお考えですか。
緒方代表
非常に楽観的に見ています。確かに課題は多いですが、優秀な起業家が次々と生まれているのは間違いない事実です。彼らの多くはグローバル志向で、最初から世界市場を見据えている。テクノロジーの進化も追い風です。AIやWeb3など、新しい技術が既存産業を破壊し、新しい機会を生み出しています。私たち投資家の役割は、こうした起業家たちを信じ、支え、日本から世界を変えるスタートアップを生み出すこと。今後10年で、日本のスタートアップシーンは劇的に変わると確信しています。私自身、その変化の最前線に立ち続けたいと思っています。

スタートアップは短距離走ではなくマラソン。10年後のビジョンに向かって走り続けられるかが重要

── 緒方代表
📝 まとめ
・投資判断で最重視するのは「起業家の情熱」と「失敗から学ぶ力」。数字だけでは測れない人間性を見極める
・日本のスタートアップ環境は改善しているが、Exit環境の未成熟さが最大の課題。大企業の戦略的M&A拡大が鍵
・今後はディープテック、地方創生×テクノロジー、社会課題解決型ビジネスの3領域に注目
・起業家には「小さく始めて早く失敗する」「素直さと学習意欲」「長期的視点」の3つが不可欠

🏢企業情報

会社名 株式会社ホライズンベンチャーズ
業種 スタートアップ・VC
役職 代表取締役 マネージングパートナー
代表者 緒方 拓人
← 一覧に戻る

取材をご希望の企業様へ

VERIQ Pressでは、企業の価値を伝えるインタビュー記事の取材を受け付けております。御社の魅力を広く発信しませんか?

お問い合わせはこちら