創業68年の老舗工務店が、BIM導入と若手育成で実現する「顧客満足度98%」の秘訣と、人口減少時代における地方建設業の生き残り戦略に迫る
老舗工務店の変革への挑戦
編集部
高遠建設様は1956年創業と伺っていますが、近年は積極的にデジタル化を推進されているとお聞きしました。変革のきっかけを教えていただけますか。
高遠社長
ありがとうございます。祖父が創業し、父、そして私と三代続く会社ですが、正直なところ5年前までは典型的な「昭和型工務店」でした。図面は手書き、顧客管理は紙ベース、職人との連絡は電話のみ。それでも地域の信頼で仕事はいただけていましたが、若手が定着しない、利益率が低い、という課題を抱えていました。転機は2019年、当時入社3年目だった現在の副社長が「このままでは会社が持たない」と本気で訴えてくれたことです。彼女は大手ゼネコンから転職してきた人材で、業界の最新動向を熟知していました。
編集部
具体的にはどのような改革から着手されたのでしょうか。
高遠社長
まず取り組んだのはBIM(Building Information Modeling)の導入です。初期投資は約2,000万円と、当時の我が社には大きな決断でしたが、これが劇的な変化をもたらしました。3D設計により、お客様との打ち合わせで「イメージと違う」というトラブルがほぼゼロになりました。また、設計段階で構造や設備の干渉をチェックできるため、現場での手戻りが激減し、工期を平均15%短縮できています。職人からも「図面が分かりやすくなった」と好評です。
編集部
デジタル化への抵抗はなかったのでしょうか。
高遠社長
もちろんありました。特にベテラン職人からは「今までのやり方で何が悪い」という声も上がりました。そこで私は半年間、毎週金曜日に社内勉強会を開催しました。外部講師も招き、若手が先輩に教える機会も設けました。大切だったのは「デジタル化は仕事を奪うものではなく、職人の技術をより活かすためのツールだ」と繰り返し伝えたことです。実際、BIM導入後、優れた職人技が必要な部分により時間を割けるようになり、完成度が上がったという声が現場から上がっています。
デジタル化は職人の技術を奪うのではなく、その価値をより高めるためのツールです
── 高遠社長
人材育成と働き方改革
編集部
建設業界全体で人手不足が深刻ですが、貴社の人材戦略についてお聞かせください。
高遠社長
当社では「選ばれる会社」になることを目標に掲げています。具体的には、週休2日制の完全実施、残業時間の削減、そして給与水準の引き上げを実現しました。特に力を入れているのが新卒採用です。5年前まで年間1〜2名だった新卒採用を、現在は毎年5〜6名確保できています。地元の工業高校や専門学校との連携を強化し、インターンシップも積極的に受け入れています。
編集部
週休2日制は建設業界では難しいと言われていますが、どのように実現されたのでしょうか。
高遠社長
確かに簡単ではありませんでした。鍵は工程管理の徹底的な見える化です。全現場にクラウド型の工程管理システムを導入し、遅延の予兆を早期に発見できる体制を構築しました。また、協力会社との間で「日曜日は原則作業しない」という約束を結び、それを前提としたスケジュールを組むようにしました。初年度は正直苦労しましたが、2年目からは現場も慣れ、現在では残業時間も月平均20時間以下を維持しています。離職率も改革前の15%から5%以下に下がりました。
編集部
若手育成で特に工夫されている点はありますか。
高遠社長
「メンター制度」と「資格取得支援制度」の2本柱です。新入社員には必ず先輩社員がマンツーマンでつき、技術指導だけでなく生活面の相談にも乗ります。資格取得については、受験費用の全額負担はもちろん、合格時には報奨金を支給しています。一級建築士に合格した社員には50万円、二級でも30万円です。昨年は社員45名中、延べ12名が何らかの資格を取得しました。若手が成長を実感できる環境づくりが、定着率向上につながっていると感じています。
週休2日制は「できない理由」を探すのではなく、「実現する方法」を全員で考えることから始まります
── 高遠社長
地域密着と事業の多角化
編集部
人口減少が進む地方で、今後の事業展開についてどのようにお考えですか。
高遠社長
私は地方だからこそのチャンスがあると考えています。当社が今注力しているのは「リノベーション事業」と「空き家活用事業」です。新築着工件数は確かに減少していますが、既存住宅のリフォーム需要は確実に増えています。特に築30〜40年の住宅を、断熱性能や耐震性能を大幅に向上させながら、現代の暮らしに合わせて再生する案件が増えています。昨年は売上の40%がリノベーション関連でした。
編集部
空き家活用とは具体的にどのような取り組みでしょうか。
高遠社長
地元自治体と連携し、空き家バンクに登録されている物件をリノベーションして、移住希望者や若い世代に提供する事業です。単なる改修工事だけでなく、物件の調査、所有者との交渉、改修プランの提案、入居後のアフターフォローまでワンストップで対応しています。昨年は8棟を手がけ、すべて入居が決まりました。空き家が減り、地域に新しい住民が増えることで、地域活性化にも貢献できていると自負しています。自治体からの紹介案件も増えており、今年は15棟を目標にしています。
編集部
最後に、今後の展望と業界へのメッセージをお願いします。
高遠社長
建設業界は「きつい、汚い、危険」の3Kと言われてきましたが、それは過去の話にしなければなりません。テクノロジーを活用し、働き方を改革し、社会的意義を若い世代に伝えることで、必ず魅力的な業界になると信じています。当社も5年間の改革でようやくスタート地点に立てたという感覚です。今後は、培ったノウハウを地域の同業者とも共有し、業界全体の底上げに貢献したいと考えています。また、次の10年を見据えて、環境配慮型建築やスマートホーム分野にも積極的に投資していきます。地域に必要とされ、社員が誇りを持って働ける会社であり続けることが、私の使命だと考えています。
地方の建設業こそ、地域の未来を創る最前線。その誇りを持って、次世代につなげていきたい
── 高遠社長
まとめ
・BIM導入など積極的なDX推進で工期15%短縮、顧客満足度98%を実現
・週休2日制・残業削減により離職率を15%から5%以下に改善、新卒採用も年5〜6名確保
・リノベーション事業が売上の40%を占め、空き家活用で地域活性化にも貢献
・資格取得支援制度やメンター制度で若手育成を強化、延べ12名が資格取得
・週休2日制・残業削減により離職率を15%から5%以下に改善、新卒採用も年5〜6名確保
・リノベーション事業が売上の40%を占め、空き家活用で地域活性化にも貢献
・資格取得支援制度やメンター制度で若手育成を強化、延べ12名が資格取得
企業情報
| 会社名 | 株式会社高遠建設 |
|---|---|
| 業種 | 不動産・建設 |
| 役職 | 代表取締役社長 |
| 代表者 | 高遠 誠一郎 |