地方都市で三代続く建設会社が、CLT工法と地域材活用で新たな市場を開拓。人材育成と技術革新により、地域になくてはならない存在へと進化を遂げている。
三代目が挑む、木造建築の新時代
編集部
森川社長が代表に就任されて5年が経ちました。木造建築への注力を打ち出された背景をお聞かせください。
森川社長
祖父の代から数えて72年、当社は地元・長野県で主に公共工事や住宅建設を手がけてきました。しかし就任当時、受注競争の激化と人材不足という二重苦に直面していたんです。そこで着目したのが、CLT(直交集成板)をはじめとする木造建築の新技術でした。長野は森林県ですから、地元の木材を活用できれば輸送コストも抑えられ、林業の活性化にも貢献できる。これは単なる事業戦略ではなく、地域に根ざした企業としての使命だと考えたんです。
編集部
木造建築へのシフトに、社内からの反発はありませんでしたか?
森川社長
正直、最初は大きな抵抗がありました。特にベテラン職人たちからは「木造は住宅だけで十分」「RC造の方が安定している」という声が強かった。でも私は、木造中大規模建築という新市場に可能性を感じていました。そこで、まず自社の事務所棟をCLT工法で建て替えたんです。実際に働く環境として体感してもらうことで、木の温もりや調湿効果、工期の短さなど、具体的なメリットを理解してもらえました。
編集部
技術習得のための投資も相当なものだったのでは?
森川社長
ええ、年間売上の約15%を研修と設備投資に充てました。CLT工法の専門研修に社員を派遣し、CAD/CAMシステムも導入しました。また、県の林業試験場や地元の製材所との連携も強化し、木材の品質管理から施工まで一貫して対応できる体制を整えました。投資回収には5年かかると覚悟していましたが、3年目には黒字化できましたね。
木造建築は単なる工法ではなく、地域の森林資源と雇用を守る社会インフラなんです
── 森川社長
人材育成と女性活躍推進
編集部
建設業界の人材不足は深刻です。御社ではどのような対策を?
森川社長
当社の特徴は新卒採用と女性技術者の積極登用です。現在、技術職の約30%が女性で、業界平均の2倍以上です。彼女たちの多くは建築やインテリアデザインを学んだ人材で、木造建築の美しさや機能性を追求する姿勢が非常に高い。また、設計段階からBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用することで、体力勝負ではなく知識と技術で勝負できる環境を整えています。
編集部
働き方改革にも積極的だとお聞きしました。
森川社長
建設業は長時間労働のイメージが強いですが、それでは優秀な人材は集まりません。当社では週休2日制を完全実施し、ICTを活用した工程管理で残業時間を月平均20時間以内に抑えています。また、産休・育休からの復帰率は100%で、時短勤務やリモートワークも導入しました。こうした取り組みが評価され、昨年は県の「働きやすい企業認証」も取得できました。
編集部
若手社員の育成プログラムについて教えてください。
森川社長
「一人前5年計画」と名付けた育成プログラムを運用しています。1年目は各部署をローテーションして全体像を把握し、2年目から専門分野に配属。3年目には小規模プロジェクトのリーダーを経験させます。重要なのは、失敗を恐れずチャレンジできる環境です。私自身、若い頃に数々の失敗をして成長しましたから。月1回の社長面談では、技術的な相談だけでなく、キャリアビジョンや悩みも気軽に話せる関係を心がけています。
建設業の未来は、多様な人材が活躍できる環境づくりにかかっています
── 森川社長
地域との共創と今後のビジョン
編集部
地域との連携で印象に残っているプロジェクトはありますか?
森川社長
昨年完成した「木もれ日こども園」ですね。定員120名の保育園で、地元産カラマツを100%使用したCLT構造です。設計段階から保育士さんや保護者の意見を取り入れ、子どもたちが木に触れ、木の香りを感じられる空間を実現しました。完成後のアンケートでは「子どもたちが落ち着いて過ごせるようになった」という声を多数いただき、木造建築の情緒的価値を実感しましたね。このプロジェクトは建築学会の地域貢献賞も受賞しました。
編集部
脱炭素社会に向けた取り組みも進めていらっしゃいます。
森川社長
建設業界はCO2排出量が多い産業ですから、環境負荷低減は待ったなしの課題です。木造建築は炭素の固定化という点で非常に優れています。当社では、建物のライフサイクル全体でのCO2排出量を算出し、削減目標を設定しています。また、太陽光発電や地中熱利用などの再生可能エネルギーと組み合わせた「ゼロエネルギー建築」にも取り組んでいます。先月竣工した高齢者施設は、年間エネルギー収支がほぼゼロのZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)として認証されました。
編集部
最後に、今後の展望をお聞かせください。
森川社長
短期的には、木造建築の実績をさらに積み上げ、5階建て以上の中層木造建築にも挑戦したいですね。すでに市内の商業施設プロジェクトで設計段階に入っています。中長期的には、当社が培ったノウハウを他地域にも展開したい。全国には当社と同じように地域に根ざした建設会社がたくさんあります。彼らと技術提携やノウハウ共有のネットワークを構築し、日本全体で持続可能な建設業を実現していきたいんです。
編集部
地域企業ならではの強みを、どのように磨いていきますか?
森川社長
大手ゼネコンにはない、私たちの強みは「顔が見える関係性」です。施主様と直接対話し、地域の気候風土や文化を理解した上で、最適な提案ができる。また、完成後のアフターフォローも迅速に対応できます。この信頼関係こそが、当社の最大の財産であり、競争力の源泉です。テクノロジーは積極的に取り入れますが、人と人とのつながりを大切にする姿勢は、これからも変わりません。地域になくてはならない企業であり続けること、それが私の目指す未来です。
地域に根ざし、地域と共に成長する。これが私たちの経営哲学です
── 森川社長
まとめ
・CLT工法など木造建築の新技術に注力し、地域材活用による地方創生を実現
・女性技術者比率30%、週休2日制完全実施など、働き方改革で人材確保に成功
・地元産木材100%使用の保育園プロジェクトで建築学会賞を受賞
・ゼロエネルギー建築(ZEB)の実現など、脱炭素社会への貢献を推進
・地域密着型の信頼関係を強みに、持続可能な建設業モデルの全国展開を目指す
・女性技術者比率30%、週休2日制完全実施など、働き方改革で人材確保に成功
・地元産木材100%使用の保育園プロジェクトで建築学会賞を受賞
・ゼロエネルギー建築(ZEB)の実現など、脱炭素社会への貢献を推進
・地域密着型の信頼関係を強みに、持続可能な建設業モデルの全国展開を目指す
企業情報
| 会社名 | 株式会社緑建工業 |
|---|---|
| 業種 | 不動産・建設 |
| 役職 | 代表取締役社長 |
| 代表者 | 森川 健太郎 |