精密金型技術で世界市場を開拓する老舗メーカーの挑戦──金型製作から成形まで一貫体制を武器に
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精密金型技術で世界市場を開拓する老舗メーカーの挑戦──金型製作から成形まで一貫体制を武器に

三世代で磨いた金型技術が切り拓く、次世代製造業の可能性

株式会社山城精密工業

山城 健太郎
代表取締役社長 山城 健太郎 株式会社山城精密工業

創業68年の精密金型メーカーが、独自の超精密加工技術と射出成形の一貫生産体制で、医療機器から自動車部品まで幅広い分野で存在感を示している。

三代続く金型一筋の家業を継いで

大阪府東大阪市に本社を構える株式会社山城精密工業は、1956年の創業以来、精密金型製作プラスチック射出成形を手掛けてきた老舗メーカーだ。三代目社長である山城健太郎氏は、大手機械メーカーでの10年間の修行を経て、2015年に家業へと戻った。「正直、最初は継ぐつもりはありませんでした」と当時を振り返る山城社長。しかし、父である先代社長から工場を案内された際、職人たちが0.01ミリ単位の精度で金型を仕上げていく姿に感銘を受けたという。

「大手企業では分業が当たり前でしたが、うちの職人は設計から加工、仕上げまで一貫して担当します。その技術力の高さに、改めて家業の価値を認識しました」。山城社長が社長に就任したのは2018年。当時の従業員数は42名、年商は約8億円だった。現在は従業員68名、年商12億円にまで成長を遂げている。

同社の強みは、金型設計から製作、射出成形、二次加工までを自社内で完結できる一貫生産体制にある。特に、微細加工技術においては業界内でも高い評価を得ており、公差±0.005mm以内という超精密加工を実現している。

デジタル化への投資で生産性を3割向上

山城社長が就任後、最初に着手したのが生産設備のデジタル化だった。「職人の勘と経験は重要ですが、それだけでは若い世代に技術を継承できません」。そう考えた山城社長は、2019年から3年間で総額2億5千万円を投じて、5軸マシニングセンタ3台とCAD/CAMシステムの刷新を行った。

特に注力したのが、金型製作工程におけるデジタルツインの構築だ。設計段階で3Dシミュレーションを行い、加工プログラムを最適化することで、試作回数を平均40%削減することに成功。リードタイムは従来の45日から28日へと大幅に短縮された。「ベテラン職人からは最初、反発もありました。しかし、データで可視化することで、彼らの暗黙知を形式知に変換できたんです」と山城社長は語る。

さらに、IoTセンサーを全射出成形機に導入し、成形条件や稼働状況をリアルタイムでモニタリングできる体制を整備。不良品発生率は従来の1.8%から0.6%まで低減し、生産性は約32%向上した。これらのデジタル化投資により、従業員一人当たりの生産額は1,900万円から2,700万円へと飛躍的に向上している。

医療機器分野への参入で新たな成長軸を確立

山城社長が次に目を向けたのが、事業ポートフォリオの転換だった。従来、同社の売上の70%は自動車部品関連が占めていたが、電気自動車へのシフトによる部品点数減少を見据え、医療機器分野への本格参入を決断した。

「医療機器は自動車部品とは求められる品質レベルが全く違います。バイオコンパティビリティ(生体適合性)やクリーンルーム環境での生産など、新たな課題が山積みでした」。山城社長は2020年にISO 13485(医療機器品質マネジメントシステム)の認証を取得し、クラス10,000のクリーンルームを新設。初期投資額は約1億2千万円に上った。

最初の2年間は赤字続きでしたが、一度信頼を得られれば長期的な取引関係を築けるのが医療機器業界の特徴です。今では売上の35%を占めるまでになりました。

山城健太郎社長

現在、同社は内視鏡用部品人工透析装置の微細部品など、高精度が求められる医療機器コンポーネントを手掛けている。特に、外径2mm以下の微細射出成形技術では、国内でもトップクラスの技術力を有しており、大手医療機器メーカー5社との取引実績を持つ。

人材育成とサステナビリティへの取り組み

技術革新と事業転換を進める一方で、山城社長が最も重視しているのが人材育成だ。「製造業の未来は、デジタル技術を使いこなせる職人をどれだけ育てられるかにかかっています」。同社では、新入社員に対して3年間の体系的な教育プログラムを用意。1年目は基礎的な機械加工技術、2年目は金型設計とCAD/CAM、3年目は射出成形の成形条件設定を学ぶカリキュラムとなっている。

また、2022年からは地元の工業高校と連携し、インターンシップの受け入れも開始。年間15名程度の高校生を受け入れ、そのうち約30%が入社を希望するという成果を上げている。「若い世代に製造業の面白さを伝えることが、業界全体の底上げにつながります」と山城社長は強調する。

サステナビリティへの取り組みも加速している。2023年には太陽光発電システム(出力150kW)を工場屋上に設置し、電力使用量の約25%を自家発電で賄えるようになった。さらに、バイオマスプラスチックリサイクル材料を使用した成形品の開発にも注力。環境配慮型製品の比率を、2025年までに全体の40%まで引き上げる目標を掲げている。

「お客様からもサプライチェーン全体でのCO2削減を求められる時代になりました。環境対応は企業存続の必須条件です」。実際、同社のCO2排出量は2020年比で18%削減されており、取引先からの評価も高まっている。

グローバル展開と次世代技術への投資

国内市場が成熟する中、山城社長は海外展開にも積極的だ。2023年にはベトナムに合弁会社を設立し、現地生産を開始。「人件費の削減だけが目的ではありません。成長著しいアジア市場に近い場所で、現地のニーズを直接掴むことが重要です」。ベトナム工場では、日本から派遣した技術者3名が現地スタッフ25名を指導。日本と同等の品質基準を維持しながら、コスト競争力のある生産体制を構築している。

技術面では、金属3Dプリンターを活用した金型製作の研究開発にも着手。従来の切削加工では困難だった複雑形状のコンフォーマル冷却回路(金型内部の冷却水路を製品形状に沿って配置する技術)を実現し、成形サイクルタイムを最大30%短縮できる見通しだ。「積層造形技術は金型製作に革命をもたらす可能性があります。先行投資してでも技術を確立したい」と山城社長は意気込む。

また、AIを活用した成形条件の自動最適化システムの開発も進めている。大学の研究室と共同で、過去の成形データを機械学習させ、最適な射出速度、保圧、冷却時間を自動算出するアルゴリズムを構築中だ。2024年度中の実用化を目指している。

「製造業は決してオールドエコノミーではありません。デジタル技術と職人技を融合させることで、まだまだ成長できる産業です」。山城社長の言葉には、日本のモノづくりの未来への確信が込められている。同社は2030年までに年商30億円、従業員100名体制を目指し、精密加工技術で世界と戦える企業への進化を続けている。

📝 まとめ
・創業68年の精密金型メーカーが、三代目社長のもとでデジタル化と事業転換を推進
・5軸マシニングセンタとIoT導入により生産性32%向上、不良率を1.8%から0.6%に削減
・医療機器分野に参入しISO 13485取得、売上構成比35%を占める新たな柱に成長
・ベトナム進出と金属3Dプリンター、AI活用など次世代技術への積極投資で2030年売上30億円を目指す

🏢企業情報

会社名 株式会社山城精密工業
業種 製造・メーカー
役職 代表取締役社長
代表者 山城 健太郎
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