創業3年で調達額30億円。ディープテック特化VCが描く日本の技術革新戦略
スタートアップ・VC

創業3年で調達額30億円。ディープテック特化VCが描く日本の技術革新戦略

「死の谷」を超えるには、資金だけでなく技術理解が不可欠

株式会社テクノロジーフロンティアキャピタル

北川 誠一郎
代表取締役パートナー 北川 誠一郎 株式会社テクノロジーフロンティアキャピタル

大手総合商社とメガバンク出身者が立ち上げたディープテック特化型VC。研究開発型スタートアップへの投資で独自のポジションを確立し、LP投資家からも高い評価を得ている。

総合商社からディープテックVCへ転身した理由

編集部
北川さんは大手総合商社で15年のキャリアを積まれた後、VC業界に転身されました。なぜこのタイミングでディープテック特化型VCを立ち上げたのでしょうか。
北川パートナー
商社時代、新規事業開発部門で数多くのスタートアップと協業してきました。その中で痛感したのが、日本には優れた技術シーズを持つ研究者が多いにもかかわらず、事業化までの「死の谷」を超えられないケースが非常に多いということです。特に量子コンピューティング、マテリアル、バイオテクノロジーといったディープテック領域では、従来型VCの投資判断基準では評価しきれない部分が多く、結果として資金が集まりにくい。この構造的な課題を解決したいと考えたのが起業のきっかけです。
編集部
共同創業者の方々も、それぞれ異なるバックグラウンドをお持ちですね。
北川パートナー
はい。共同創業者の一人はメガバンクで企業審査を20年経験しており、もう一人は東京大学で材料工学の博士号を取得後、国立研究機関で10年以上研究に従事していました。金融、技術、事業開発という3つの専門性を掛け合わせることで、ディープテック企業を多角的に評価できる体制を構築しています。単なる財務分析だけでなく、技術の新規性や実現可能性を科学的に判断できることが、私たちの最大の強みです。
編集部
創業3年で30億円の調達に成功されていますが、LP投資家の反応はいかがでしたか。
北川パートナー
正直、最初は苦労しました。ディープテックは投資回収まで7年から10年かかるケースも多く、短期リターンを求める投資家には敬遠されがちです。しかし、日本の技術力を社会実装につなげることが国家競争力に直結するという認識が、この数年で急速に広がりました。結果として、事業会社、大学ファンド、政府系金融機関など多様なLPから出資を受けることができました。特に製造業の大手企業からは「自社だけではカバーしきれない技術領域へのアクセス」として評価いただいています。

日本には世界トップレベルの技術シーズがある。問題は、それを事業化する仕組みが整っていないこと

── 北川パートナー

ポートフォリオ企業への「ハンズオン支援」の実態

編集部
投資先の選定基準について教えてください。どのような企業に投資されているのでしょうか。
北川パートナー
現在、15社に投資しており、領域としては量子技術、次世代電池、合成生物学、先端材料などが中心です。選定基準は3つあります。一つ目は技術の新規性と特許ポートフォリオの強さ。二つ目は創業チームに技術を深く理解しているコアメンバーがいること。三つ目は、5年から7年以内に実用化の目処が立つ具体的なマイルストーンが描けているかです。特に重視しているのは、単なる論文レベルではなく、プロトタイプや概念実証が完了している段階であることですね。
編集部
投資後のハンズオン支援が充実していると伺っています。具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。
北川パートナー
私たちは「キャピタル・アズ・ア・サービス」というコンセプトを掲げています。資金提供だけでなく、事業化に必要なあらゆるリソースを提供することを重視しています。例えば、研究開発型スタートアップは初期段階で製造パートナーを見つけることが困難です。そこで私たちのネットワークを活用し、大手メーカーとの協業機会を創出します。また、規制対応や知財戦略の構築、海外市場へのエントリーなど、技術系創業者が苦手とする領域について専門家チームでサポートしています。月に一度は必ず経営会議に参加し、技術開発の進捗だけでなく、組織課題や資金繰りまで議論します。
編集部
投資先企業から「ここが助かった」という具体的なフィードバックはありますか。
北川パートナー
先日、ある次世代電池のスタートアップCEOから「量産化のパートナー探しに半年かかると覚悟していたが、テクノロジーフロンティアキャピタルの紹介で2ヶ月で決まった」と言われました。ディープテック企業にとって、技術を理解した上で適切なパートナーをマッチングしてくれることは、資金以上に価値があるのです。また、別の量子コンピューティング企業では、アメリカ市場への参入戦略を一緒に練り、現地VCへの紹介も行いました。技術力があっても、グローバル展開のノウハウがない企業は多いので、そこを補完できることは大きいですね。

資金だけ出して「頑張ってください」では、ディープテック企業は育たない

── 北川パートナー

日本のディープテックエコシステムの課題と展望

編集部
日本のディープテック投資環境について、どのような課題を感じていますか。
北川パートナー
最も大きな課題は、リスクマネーの絶対量がまだまだ不足していることです。アメリカではディープテック領域に年間数兆円規模の投資が行われていますが、日本はその10分の1程度。特にシリーズB以降の成長資金が極端に少ない。優れた技術を持つ企業が、資金不足で海外VCに買収されたり、上場を急ぎすぎて成長機会を逃したりするケースを何度も見てきました。また、大学発ベンチャーの場合、利益相反の問題や知財の帰属など、制度的な障壁もまだ多いですね。
編集部
政府も大学ファンドの創設など、ディープテック支援に力を入れ始めています。この動きをどう評価されますか。
北川パートナー
非常にポジティブに捉えています。10兆円規模の大学ファンドが動き出し、研究開発型スタートアップへの資金供給が増えることは間違いありません。ただし、資金だけでなく、事業化を支援するエコシステム全体の構築が重要です。私たちのような民間VCと、政府系ファンド、事業会社、大学が連携し、技術シーズの発掘から実用化、グローバル展開まで一気通貫で支援する仕組みが必要です。海外では、こうしたエコシステムが既に機能しているので、日本も急速にキャッチアップしなければなりません。
編集部
今後5年間で、日本のディープテック業界はどのように変化すると予想されますか。
北川パートナー
間違いなく黄金期を迎えると思います。気候変動、エネルギー問題、食料危機など、グローバルな社会課題の解決にはディープテックが不可欠です。日本は材料科学、ロボティクス、バイオ技術など、世界トップレベルの研究蓄積があります。これらが適切な資金とビジネスモデルと結びつけば、ユニコーン企業が次々と生まれる可能性があります。私たちの投資先からも、5年以内に2社から3社は上場できると確信しています。
編集部
最後に、これからディープテック領域で起業を考えている研究者や技術者にメッセージをお願いします。
北川パートナー
技術力だけでは事業は成功しません。しかし、技術力なくして社会を変えるイノベーションは生まれません。重要なのは、自分の強みである技術を磨き続けながら、足りない部分は適切なパートナーと組むことです。私たちのようなVCは、単なる資金提供者ではなく、共に事業を創るパートナーでありたいと考えています。優れた技術と情熱を持った起業家との出会いを、いつも楽しみにしています。日本から世界を変えるディープテックスタートアップを、一緒に育てていきましょう。

日本のディープテックは、これから間違いなく黄金期を迎える

── 北川パートナー
📝 まとめ
・総合商社出身の北川氏が、金融・技術・事業開発の専門性を結集し、ディープテック特化型VCを創業
・創業3年で30億円を調達し、量子技術や次世代電池など15社に投資。技術の新規性と実用化の目処を重視
・「キャピタル・アズ・ア・サービス」として、資金だけでなく製造パートナー紹介や海外展開支援などハンズオン支援を提供
・日本のディープテック投資は資金不足が課題だが、大学ファンド創設など政策支援により今後5年で黄金期を迎えると予測

🏢企業情報

会社名 株式会社テクノロジーフロンティアキャピタル
業種 スタートアップ・VC
役職 代表取締役パートナー
代表者 北川 誠一郎
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