地方都市の再開発に木造中高層建築を提案し続ける日本建創。環境配慮と地域経済の活性化を両立させる新しい不動産開発のビジョンとは。
木造中高層建築への転換
編集部
御社は木造中高層建築に特化した不動産開発を手がけておられますが、この分野に注目されたきっかけを教えてください。
森川社長
当社は元々、地方都市での商業施設開発を中心に事業を展開してきました。しかし10年ほど前から、地方の空洞化と環境問題の深刻化を目の当たりにして、このままの開発手法では持続可能性がないと痛感したんです。ちょうどその頃、欧州で木造高層建築が注目され始めていました。日本は森林資源が豊富で林業の活性化も課題でしたから、これは日本の地方再生に最適な解決策だと確信しました。
編集部
実際に木造中高層建築を始める際、どのような困難がありましたか。
森川社長
最初は本当に苦労の連続でしたね。まず建築基準法の制約が大きな壁でした。2010年の法改正で可能になったとはいえ、実例が少なく行政との調整に時間がかかりました。また、施工できる技術者も限られていて、人材育成から始める必要がありました。金融機関の理解を得るのも大変で、最初のプロジェクトでは通常の3倍近い時間をかけて説得しました。
編集部
それでも諦めずに続けられた理由は何でしょうか。
森川社長
初めて完成させた5階建ての木造商業施設を見た時の感動は忘れられません。地元の木材を使い、地元の職人が建て、地域の人々が集う場所になった。建築が地域経済を循環させるという実感を得られたんです。入居テナントからも「木の温もりが顧客満足度を高めている」という声をいただきました。この経験が、私たちの方向性は間違っていないという確信に変わりました。
建築が地域経済を循環させる実感を得られた瞬間、この道を進む覚悟が決まりました
── 森川社長
地域との協働による開発モデル
編集部
御社の開発プロジェクトでは地域との連携を重視されていますね。
森川社長
はい、私たちは「地域協働型開発」と呼んでいます。具体的には、計画段階から地元の林業組合、製材所、工務店、そして自治体と緊密に連携します。例えば現在進行中の富山県での複合施設プロジェクトでは、県内6つの林業組合から木材を調達し、地元の製材所で加工し、県内の建設会社と共同で施工しています。これにより建設費の約60%が地域内に還元される仕組みです。
編集部
そうした地域密着型の開発は、大手デベロッパーとの差別化にもつながっていますか。
森川社長
まさにその通りです。大手は効率性とスピードを重視しますが、私たちは時間をかけて地域に根ざした開発を行います。地元の人々と何度も対話を重ね、本当に必要とされる施設を考える。時には当初計画を大きく変更することもあります。石川県のプロジェクトでは、住民の声を聞いて商業施設から地域交流拠点へと方針転換しました。結果的にそれが成功し、年間15万人が訪れる施設になっています。
編集部
地域との信頼関係構築で特に心がけていることは。
森川社長
「透明性」と「継続性」です。開発の進捗状況や収支計画もできる限りオープンにし、完成後も定期的に地域の方々と意見交換会を開催しています。また、完成して終わりではなく、10年、20年と関わり続ける姿勢を示すことが重要です。実際、5年前に完成させた施設でも、毎年メンテナンスと同時に地域ニーズの変化をヒアリングし、テナント構成を調整しています。
編集部
そうした長期的な関与は、経営的には負担になりませんか。
森川社長
短期的には確かにコストがかかります。しかし長期で見れば、地域からの信頼が次のプロジェクトにつながるんです。実際、私たちの新規案件の7割は、過去のプロジェクト関係者からの紹介です。広告宣伝費をほとんどかけずに案件が獲得できるのは、この信頼資産があるからです。また、地域に根ざした開発は空室率も低く、長期的な収益性も高いというデータが出ています。
林業再生と建築の融合
編集部
木材調達において、国産材にこだわる理由を教えてください。
森川社長
理由は3つあります。第一に環境負荷の低減です。輸入材に比べて輸送距離が短く、CO2排出量を大幅に削減できます。第二に品質管理です。国産材なら産地から加工まで一貫して管理でき、トレーサビリティも確保できます。そして第三が、日本の林業再生への貢献です。日本の人工林の多くが伐採適齢期を迎えていますが、需要不足で放置されています。建築用途で需要を創出することが、森林の健全な循環につながるんです。
編集部
林業側との連携では、どのような工夫をされていますか。
森川社長
私たちは建築プロジェクトの計画段階から林業組合と情報共有しています。2年後、3年後にどれだけの木材が必要かを早めに伝えることで、林業側も計画的な伐採・育林ができます。また、従来は建築用材にならないとされていた曲がった木材や節の多い木材も、デザインの工夫で活用する方法を開発しました。これにより木材の歩留まりが向上し、林業の収益性改善にも貢献しています。
編集部
木材価格の変動リスクはどう管理されていますか。
森川社長
これは重要な課題です。私たちは長期契約と価格安定化の仕組みを導入しています。複数の林業組合と3〜5年の供給契約を結び、一定量を安定価格で調達する約束をします。その代わり、私たちも安定的な需要を保証します。また、自社で木材のストックヤードを持ち、価格が安い時期に先行購入して乾燥・保管することで、コスト変動を吸収しています。
編集部
今後の展望として、木造建築の可能性をどう見ていますか。
森川社長
10階建て以上の木造建築にも挑戦したいと考えています。技術的には可能になってきており、都市部での中高層オフィスビルや集合住宅への展開を視野に入れています。また、木造建築のデータベース化も進めています。各プロジェクトの設計データ、施工ノウハウ、維持管理情報を蓄積し、業界全体で共有することで、木造建築の標準化とコスト削減を実現したいですね。
木造建築は単なる建物ではなく、森と都市をつなぐ架け橋なんです
── 森川社長
次世代への継承と新たな挑戦
編集部
人材育成についてはどのような取り組みをされていますか。
森川社長
木造建築の設計・施工には特殊なスキルが必要なので、社内教育プログラムを充実させています。新入社員は必ず3ヶ月間、提携している製材所と工務店で研修を受けます。木材の特性を理解せずに設計はできませんからね。また、年に2回、欧州の先進的な木造建築を視察するツアーも実施しています。技術だけでなく、持続可能な社会への志を持った人材を育てることを重視しています。
編集部
若い世代の社員からは、どんな反応がありますか。
森川社長
非常にポジティブですね。特に環境問題に関心の高い世代にとって、自分の仕事が社会課題の解決に直結しているという実感が持てることが魅力のようです。先日も新卒社員が「就活では大手も検討したが、地域や環境に具体的に貢献できる仕事がしたくて日本建創を選んだ」と話していました。こうした若い力が、会社に新しい発想をもたらしてくれています。
編集部
新しい発想とは、例えばどのようなものですか。
森川社長
最近若手が提案したのは、「木育×不動産」というコンセプトです。開発した施設内に木工ワークショップスペースを設け、子どもたちが木に触れる機会を提供する。そこで使う木材は、その建物の建設時に出た端材を活用します。施設が地域の環境教育の拠点にもなるという発想で、現在2つのプロジェクトで実装準備中です。こういう若い感性が、事業の幅を広げてくれています。
編集部
経営者として、今後の不動産・建設業界をどう見ていますか。
森川社長
業界全体が「つくっては壊す」から「長く使い続ける」へとシフトしていく時代だと思います。そのためには、環境に配慮した素材選び、地域との共生、そして何より「愛される建物」をつくることが重要です。木造建築は時間とともに味わいが増し、愛着が生まれやすい。私たちはこの特性を活かして、50年、100年と地域で愛される建築を残していきたいですね。
編集部
最後に、これから不動産業界を目指す若い人たちへメッセージをお願いします。
森川社長
不動産・建設業界は、社会インフラを創る、非常にやりがいのある仕事です。特にこれからは、環境問題、地方創生、コミュニティ再生など、社会課題解決の最前線に立てる業界だと思います。単に建物を建てるのではなく、その先にある人々の暮らしや地域の未来を描ける。そんな志を持った若い方々に、ぜひこの業界に飛び込んできてほしいですね。私たちも、そういう仲間を全力で応援します。
50年、100年と地域で愛される建築を残していきたい
── 森川社長
まとめ
・木造中高層建築に特化し、環境配慮と地域経済循環を両立させる開発モデルを確立
・計画段階から地元林業組合・製材所・工務店と連携し、建設費の約60%を地域還元する「地域協働型開発」を実践
・国産材活用による林業再生支援と、木材の長期契約・ストックヤードによる価格安定化を実現
・社内教育プログラムと環境志向の若手人材育成により、持続可能な建築文化の継承を目指す
・計画段階から地元林業組合・製材所・工務店と連携し、建設費の約60%を地域還元する「地域協働型開発」を実践
・国産材活用による林業再生支援と、木材の長期契約・ストックヤードによる価格安定化を実現
・社内教育プログラムと環境志向の若手人材育成により、持続可能な建築文化の継承を目指す
企業情報
| 会社名 | 株式会社日本建創 |
|---|---|
| 業種 | 不動産・建設 |
| 役職 | 代表取締役社長 |
| 代表者 | 森川 健太郎 |