創業7年目で売上高30億円を達成。リユース素材と伝統工芸を掛け合わせた独自路線で、若年層から支持を集める注目企業の経営哲学に迫る。
サステナビリティを「制約」ではなく「創造の源」に
編集部
貴社は環境配慮型のファッションブランドとして急成長されていますが、創業の経緯からお聞かせください。
相澤社長
前職で大手アパレルメーカーに勤務していた際、大量生産・大量廃棄のビジネスモデルに強い疑問を感じたことがきっかけです。特に、シーズンごとに売れ残った商品が処分される現場を目の当たりにして、このままでは業界の未来はないと確信しました。2017年に独立し、最初は小さなアトリエから、リサイクル生地を使った一点物の服作りを始めました。当時はサステナブルという言葉も今ほど浸透していませんでしたが、むしろそれが良かったのかもしれません。流行に乗るのではなく、本質的な価値を追求できたと思います。
編集部
環境配慮とデザイン性の両立は難しいと言われますが、どのように克服されましたか。
相澤社長
確かに創業当初は苦労しました。リサイクル素材は色や質感が安定しないため、デザイナーからは扱いにくいという声もありました。しかし、発想を転換したんです。「制約をクリエイティビティの起点にする」というマインドセットに切り替えました。例えば、使用済みデニムをほぐして再紡績した糸は、独特の風合いが生まれます。それを活かしたジャケットは、むしろ新品の素材では出せない味わいがあり、お客様から高い評価をいただいています。制約があるからこそ、デザイナーの創造性が刺激されるんです。
編集部
具体的にはどのような素材調達をされているのでしょうか。
相澤社長
複数のルートがあります。一つは、他のアパレル企業から出る端材やデッドストック生地の買い取り。これは業界内のネットワークを活用しています。二つ目は、一般消費者からの古着回収プログラム。全国の提携店舗で回収し、状態の良いものは素材として再利用します。三つ目が、地方の伝統産業とのコラボレーションです。例えば、京都の西陣織の職人さんが作った帯を解体し、バッグやアクセサリーにリメイクする取り組みは、特に30代女性から人気です。伝統技術の保存という意味でも意義があると考えています。
制約があるからこそ、デザイナーの創造性が刺激される
── 相澤社長
デジタルとリアルを融合した販売戦略
編集部
販売チャネルについてお伺いします。ECと実店舗のバランスはどう考えていますか。
相澤社長
現在の売上比率はEC65%、実店舗35%です。創業当初はオンライン中心でしたが、3年前から実店舗展開を始めました。理由は二つあります。一つは、サステナブルファッションの価値を体感してもらう場が必要だということ。リサイクル素材の質感や、職人の手仕事の細部は、画面越しでは伝わりにくい。もう一つは、コミュニティ形成です。店舗では月に2回ほど、服のリペアワークショップや、着こなし相談会を開催しています。これが顧客ロイヤリティ向上に非常に効果的なんです。
編集部
EC事業で工夫されている点はありますか。
相澤社長
「ストーリーテリング」を徹底しています。商品ページには、使用している素材の出自、デザイナーの意図、製造を担当した職人の紹介など、詳細な情報を掲載しています。例えば「このジャケットは、北海道の牧場で使われていたデニム作業着を原料にしており、職人の○○さんが15時間かけて縫製しました」といった具合です。お客様アンケートでは、こうした情報が購買決定の重要な要素になっていることが分かっています。価格だけで勝負しない、納得して買っていただく仕組みを作っています。
編集部
SNSマーケティングも積極的に展開されていますね。
相澤社長
はい、特にInstagramとYouTubeに注力しています。ただし、単なる商品PRではなく、「教育的コンテンツ」を意識しています。例えば、ファッション業界の環境問題を分かりやすく解説する動画シリーズや、長く服を着るためのメンテナンス方法など。フォロワーは現在12万人ほどですが、エンゲージメント率が高く、コメント欄では活発な議論が交わされています。ブランドのファンというより、価値観を共有するコミュニティができている感覚です。
納得して買っていただく仕組みが、価格競争からの脱却を可能にする
── 相澤社長
組織づくりと今後の展望
編集部
現在の従業員数と、組織づくりで大切にしていることを教えてください。
相澤社長
正社員35名、パート・契約社員を含めると約60名の組織です。組織づくりで最も重視しているのは「理念への共感」です。採用面接では必ず「なぜサステナブルファッションに関心があるのか」を深掘りします。スキルは後から身につけられますが、価値観の不一致は長期的に大きな問題になります。実際、入社後の定着率は95%以上と、業界平均よりかなり高い水準を維持できています。
編集部
従業員のモチベーション維持のための施策はありますか。
相澤社長
いくつかあります。まず、全社員が年1回、提携する地方の工房や工場を訪問するプログラムを実施しています。自分たちが扱う商品がどのように作られているかを知ることで、仕事の意義を実感できます。また、四半期ごとに「インパクトレポート」を作成し、自社の事業がどれだけ環境負荷削減に貢献したかを数値化して共有しています。CO2削減量、節水量、廃棄物削減量などを可視化することで、社員一人ひとりが自分の仕事の社会的意義を感じられるようにしています。
編集部
今後の事業展開について、ビジョンをお聞かせください。
相澤社長
短期的には、地方への出店を加速させます。東京・大阪といった大都市だけでなく、地方都市にこそサステナブルファッションの需要があると考えています。地方には伝統工芸の技術がありながら、後継者不足に悩む産地も多い。私たちがハブとなって、技術保存と新しいマーケット創出の両方を実現したいです。中長期的には、アジア市場への展開を視野に入れています。特に台湾や韓国では、環境意識の高い若年層が増えており、私たちのブランドコンセプトが受け入れられる土壌があります。ただし、海外展開においても、現地の伝統技術や文化をリスペクトし、融合させるアプローチを取りたいと考えています。
編集部
最後に、これからファッション業界を目指す若い世代へメッセージをお願いします。
相澤社長
ファッション業界は今、大きな転換期にあります。「安く、早く、大量に」から「長く、深く、意味のあるものを」という価値観の変化が確実に起きています。これは若い世代の皆さんにとって、大きなチャンスです。従来のやり方に疑問を持ち、新しいアプローチを提案できる人材が求められています。私自身、業界の常識に疑問を持ったことが起業のきっかけでした。既存の枠にとらわれず、自分が信じる価値を追求してほしい。そして、ファッションを通じて社会をより良くするという視点を持ち続けてほしいと思います。この業界は、創造性と社会貢献を両立できる、非常にやりがいのある分野ですから。
ファッションを通じて社会をより良くするという視点が、これからの時代には不可欠
── 相澤社長
まとめ
・リサイクル素材と伝統工芸を融合させた独自のサステナブルファッションで、創業7年で売上30億円を達成
・「制約を創造の源にする」発想転換により、環境配慮とデザイン性の両立を実現
・EC65%・実店舗35%のバランスで、ストーリーテリングとコミュニティ形成を重視した販売戦略を展開
・理念への共感を重視した組織づくりで定着率95%以上を維持し、地方展開とアジア市場進出を視野に入れた成長戦略を描く
・「制約を創造の源にする」発想転換により、環境配慮とデザイン性の両立を実現
・EC65%・実店舗35%のバランスで、ストーリーテリングとコミュニティ形成を重視した販売戦略を展開
・理念への共感を重視した組織づくりで定着率95%以上を維持し、地方展開とアジア市場進出を視野に入れた成長戦略を描く
企業情報
| 会社名 | 株式会社クロスリンク・ファッション |
|---|---|
| 業種 | ファッション・アパレル |
| 役職 | 代表取締役社長 |
| 代表者 | 相澤 理香 |