物流業界の構造的課題に真正面から挑む
「2024年問題」と呼ばれるドライバーの労働時間規制強化を機に、物流業界は大きな転換期を迎えている。株式会社フレックスロードは、そうした時代の要請に応えるべく、倉庫内マテリアルハンドリング(マテハン)システムの開発から配送ネットワークの最適化まで、一気通貫型の物流ソリューションを提供している企業だ。同社は2015年の創業以来、自動倉庫システム、無人搬送車(AGV)、そして独自開発の配車最適化AIエンジンを軸に、年平均成長率28%という驚異的なスピードで事業を拡大してきた。
代表取締役社長の村田健一氏は、大手物流企業での現場経験を経て同社を創業。「物流の現場を知っているからこそ、本当に必要なソリューションが見えてくる」と語る村田氏に、同社の技術開発哲学と今後のビジョンについて話を聞いた。
現場主義から生まれたマテハンイノベーション
村田氏が物流業界に足を踏み入れたのは今から25年前。大手総合物流企業でキャリアをスタートし、倉庫管理、配送計画、サプライチェーン設計と、物流のあらゆる工程を経験してきた。
現場で15年働いて痛感したのは、既存の物流システムが現場の実態と乖離していることでした。高額なシステムを導入しても、結局は人の手作業に頼らざるを得ない。これでは本当の意味での効率化は実現できません。
村田健一氏
その問題意識から、村田氏は2015年に株式会社フレックスロードを設立。最初に手がけたのは、中小規模の倉庫向けに特化したモジュール型自動倉庫システムだった。従来の自動倉庫は大規模投資が必要で、中小企業には導入のハードルが高かった。同社のシステムは、初期投資を従来の約40%に抑えながら、段階的な拡張が可能な設計とした。
「最小構成はピッキングステーション2台、保管棚ユニット50基からスタートできます。事業成長に合わせてユニットを追加していけば、システム全体を刷新する必要がありません」と村田氏は説明する。このアプローチが功を奏し、創業3年目には全国で120社への導入実績を達成した。
さらに同社は、倉庫内の搬送業務を自動化するAGV(無人搬送車)の開発にも注力。特筆すべきは、既存の倉庫レイアウトを大きく変更せずに導入できる自律走行型AGVの開発に成功した点だ。LiDARセンサーとAIによる環境認識技術を組み合わせることで、レイアウト変更時の再設定時間を従来の10分の1に短縮。倉庫の稼働率を平均で18%向上させることに成功している。
AIによる配車最適化で「ラストワンマイル」革命
倉庫内の自動化で実績を積み上げた同社が次に着手したのが、物流業界最大の課題である「ラストワンマイル」の効率化だ。EC市場の拡大により、小口配送の需要は年々増加しているが、ドライバー不足と相まって配送コストは高騰の一途をたどっている。
2020年、同社は独自の配車最適化AIエンジン「FLEXROUTE」をリリース。このシステムは、配送先の住所情報、交通状況、ドライバーのスキル、車両の積載容量など、数百のパラメータをリアルタイムで解析し、最適な配送ルートを自動生成する。
従来の配車計画は、ベテランの配車担当者の経験と勘に頼る部分が大きかった。しかし人手不足の中、そうしたノウハウの継承も困難になっています。FLEXROUTEは、過去の配送データから最適解を学習し、新人でもベテラン並みの配車計画が立てられるようにしました。
村田健一氏
実際の導入企業では、1台あたりの配送件数が平均23%向上し、走行距離は15%削減された。さらに注目すべきは、CO2排出量の削減効果だ。最適ルートの選択により、年間で約580トンのCO2削減を実現した企業もある。
また同社は、配送の「波動性」にも対応する。繁忙期と閑散期で配送量が大きく変動する問題に対し、複数企業間での車両シェアリング機能を実装。異なる業種の企業が配送リソースを相互に融通し合うことで、車両稼働率を平均38%改善させた事例もある。「物流を個社最適から業界最適へ」という村田氏の理念が、ここに結実している。
サステナブル物流への挑戦と今後の展望
近年、ESG経営の観点から、物流業界にも環境配慮が強く求められるようになった。同社は2022年から、「グリーンロジスティクス推進プロジェクト」を始動させている。
その中核となるのが、電動配送車両の導入支援と充電インフラネットワークの構築だ。同社は全国150拠点にEV配送車専用の急速充電ステーションを設置し、提携企業が利用できる仕組みを整えた。さらに、太陽光発電パネルを設置した「ゼロエミッション型物流拠点」を東京、大阪、福岡の3カ所に開設。倉庫の屋上に設置した太陽光パネルで発電した電力を、倉庫設備とEV充電に活用している。
「物流業界のカーボンニュートラルは、単に車両を電動化すれば達成できるものではありません。倉庫、配送、情報システム、すべてを統合的に最適化することで初めて実現できます」と村田氏は強調する。
同社の試算では、自社ソリューションを全面導入した企業は、物流工程全体でのCO2排出量を年間32%削減できるという。これは、約450世帯分の年間排出量に相当する規模だ。
今後の展開について、村田氏は次のように語る。「2025年には、ドローン配送との連携システムの実証実験を本格化させます。離島や山間部など、配送効率が低いエリアでの新しい物流モデルを確立したい。また、海外展開も視野に入れています。特に東南アジア諸国では、EC市場の急成長に物流インフラが追いついていません。日本で培った技術とノウハウを活かせる市場だと考えています」
さらに同社は、物流データプラットフォーム構想も推進中だ。荷主、倉庫事業者、配送業者など、サプライチェーンに関わる全てのプレイヤーが情報を共有し、業界全体で最適化を図る仕組みを構築する。「物流業界全体のDXを実現し、日本のサプライチェーンを世界最高水準に引き上げることが私たちの使命です」と村田氏は力強く語った。
人材育成とテクノロジーの両輪で未来を創る
テクノロジーへの投資を惜しまない同社だが、村田氏は「最終的には人が鍵」と断言する。同社では、物流エンジニア育成プログラムを独自に開発し、年間80名の人材を育成している。
「物流の現場を理解し、かつ最新のITテクノロジーを駆使できる人材が圧倒的に不足しています。当社では、物流業界出身者にプログラミングやデータ分析を教え、逆にIT業界出身者には倉庫や配送の現場研修を必須としています」
この人材育成方針が、顧客満足度の高さにも繋がっている。同社の顧客継続率は96%と業界平均を大きく上回る。「システムを売って終わりではなく、導入後の運用改善まで伴走する体制が評価されています」と村田氏は胸を張る。
2024年、同社の売上高は前年比34%増の158億円を見込む。従業員数も創業時の12名から420名まで拡大した。物流業界の課題を熟知した現場主義と、最新テクノロジーの融合。その両輪が、株式会社フレックスロードの成長を支えている。