茨城県つくば市、筑波山麓に拠点を置くエコファーム飯島。
水産養殖と水耕栽培を組み合わせた**「アクアポニクス」**に取り組み、チョウザメの養殖や唐辛子の栽培、地域の素材を生かした加工品づくりを続けています。
けれど、エコファーム飯島を知るうえで、商品や農法だけを見ていては、その本当の姿は伝わりきりません。
中心にいるのは、代表の飯島朗さんです。
思うようにいかない出来事に直面しても、そのたびに別の方法を考え、人と出会い、学び、試し、また前へ進んできました。
その根底にあるのが、「医食同源」という考え方です。
何を売るかだけではなく、どんな食をつくるのか。誰とつくるのか。その先に、どんな地域や未来を残していくのか。
現在販売されている七味唐辛子やスパイスも、最初から「商品をつくろう」と考えて生まれたものばかりではありません。
水の問題、人との出会い、研究、地域に残る農産物との出会い。
その一つひとつが重なった先に、今の商品があります。
エコファーム飯島の歩みには、一人の生産者が食と環境、人とのつながりに向き合い続けてきた時間が刻まれています。
「やめる」という選択肢の前で、もう一度方法を考えた
現在の取り組みにつながる大きな転機の一つが、2011年3月の東日本大震災でした。
チョウザメ養殖を進めるために準備していた地下水が枯渇するという、事業そのものを揺るがす状況に直面します。
養殖を続けるのか、それとも断念するのか。
簡単に答えを出せる状況ではありませんでした。
それでも飯島さんには、途中で投げ出せない理由がありました。
地域の特産品をつくろうと、周囲の人たちが力を貸し、出資してくれた。その思いを考えると、「水がなくなったから終わり」にすることはできませんでした。
そこで発想したのが、水を何度も入れ替えるのではなく、できるだけ循環させて使う仕組みです。
以前から関心を持っていた水耕栽培と養殖を結び付け、魚を育てた水を植物の力で浄化し、再び養魚に利用する。
現在のアクアポニクスへとつながる考え方でした。
困難が起きたから、それまで積み上げたものを捨てるのではない。条件が変わったなら、その条件の中でできる方法を探す。
エコファーム飯島の原点には、華やかな成功談より先に、続けるために必死で知恵を絞った時間があります。
魚と植物を育てながら、「食の未来」そのものを考える
アクアポニクスは、水産養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型の生産方法です。
魚を育てる水と植物を育てる仕組みを切り離すのではなく、一つの循環として考えていきます。
エコファーム飯島では、魚を飼育する環境と野菜を育てる環境がつながっていることから、農薬を使わない栽培を基本とし、防腐剤を入れない食材づくりや国産材料へのこだわりを重ねてきました。
その考えを表す言葉が、「医食同源」です。
毎日口にするものは、単に空腹を満たすだけのものではありません。
人の身体をつくり、その人の毎日の生活につながっていくものです。
だからこそ、生産する側が「何を使って、どう育て、どう届けるか」を考えなければならない。
商品をつくるために農業をするのではなく、人が食べるものをつくっているという責任から農業を考える。
「私たちは食の未来を考えます」という言葉には、飯島さんが長い時間をかけて研究と試行錯誤を続けてきた理由が表れています。
一人で完成させるのではなく、人との出会いが次の道をつくってきた
飯島さんの歩みを追っていくと、繰り返し登場するのが、「人との出会い」です。
アクアポニクスを続けるためには、水だけでなく魚や餌についても理解しなければならない。
そう考え、日本水産学会の世界へ入り、水質測定や植物について学びました。
研究者との交流の中から水質浄化に役立つ植物について知り、実際に自分の環境で実験を重ねていきます。
さらに、現在の商品づくりにつながる筑波八ツ房唐辛子との出会いにも、人がいました。
研究会の設立時に訪れた方から、「この種を水耕栽培で育ててみてはどうか」と筑波八ツ房唐辛子の種を渡されたことが、一つのきっかけになりました。
植えて終わりではありません。
どの植物が環境に合うのか、一つずつ育てながら確かめ、その中で唐辛子の生育に可能性を見いだしていきました。
そして、筑波山麓に根付く福来みかんと組み合わせ、七味唐辛子「七福来」へと発展していきます。
一つの商品だけを見れば完成されたものに見えます。
しかし、その背景には、種を渡してくれた人、研究を支えてくれた人、地域で応援してくれた人との関わりがあります。
飯島さんのものづくりは、人との縁を受け取り、それを次の形にして返していく歩みでもあります。

「資金がない」からこそ、自分で考え、現場で答えを探してきた
農業や養殖では、設備を整えればすべて解決するわけではありません。
エコファーム飯島の歩みには、水不足だけでなく、限られた資金や、一人で事業を続けていく難しさもありました。
それでも、自分が立っている現場で何ができるかを考え続けてきました。
魚の水をどう循環させるか。
どの植物なら育つのか。
どうすれば水質を改善できるのか。
地域の作物をどう生かせるのか。
そして、育てた農産物をどうすれば多くの人に届けられるのか。
最初からすべての答えを持っていたわけではありません。
試して、失敗して、学んで、また試す。
飯島さんが続けてきたのは、完成された方法を守るだけの農業ではなく、現場で起きる問題に合わせて方法そのものを考え続ける農業です。
だからこそ、苦労は単に苦しい時間として終わるのではなく、新しい仕組みや商品につながるきっかけになってきました。
現在並んでいる商品にも、そうした試行錯誤の時間が詰まっています。
筑波八ツ房唐辛子と福来みかん。「七福来」に込めた筑波の味
エコファーム飯島を代表する商品の一つが、七味唐辛子「七福来」です。
中心となるのは、筑波八ツ房唐辛子と、筑波山麓に根付く福来みかん。
筑波八ツ房唐辛子は、房状に複数の実を付けることからその名が付いたとされる唐辛子です。
エコファーム飯島では、生産した唐辛子を色味や発色まで見ながら選定し、商品へと仕上げています。
そこに組み合わせるのが、香り豊かな福来みかんの皮です。
唐辛子の辛さだけを前面に押し出すのではなく、福来みかんの香りや山椒、ごまなどの素材を重ねることで、料理そのものを生かしながら風味を加えられる調味料にしています。
そばやうどんといった定番の使い方はもちろん、普段の料理に少し振りかけるだけでも、唐辛子の刺激と柑橘の香りを加えることができます。
「筑波で育てたものを、筑波らしい形で届けたい」。
そんな地域への思いが、そのまま一瓶に詰まった商品です。
七福来ギフトBOXは、令和元年度の茨城県農産加工品コンクールで金賞となる茨城県知事賞を受賞し、つくば市を代表する物産品を認定する**「つくばコレクション」**にも選ばれています。
けれど飯島さんにとって、賞を取ることだけが目的ではありません。
もともとは、人との出会いから受け取った唐辛子の種を育て、地域にある福来みかんと結び付けながら生まれたもの。
七福来には、エコファーム飯島が大切にする、「人・地域・食をつなぐ」という考え方が、そのまま表れています。
5つの味で料理の楽しみを広げる「FIVE☆RED FLAVOR’S」
七福来からさらに商品づくりを発展させたのが、5種類のスパイス・調味料を展開する「FIVE☆RED FLAVOR’S」です。
ベジタブル、海の幸、柚子胡椒、スパイスカレー、一味ニンニク。
同じ唐辛子を軸にしながら、それぞれ組み合わせる素材と辛さ、香りが異なります。
「唐辛子は辛い料理に使うもの」と用途を限定するのではなく、普段の食卓で自由に楽しんでもらえることが、このシリーズの魅力です。
ベジタブルは、かぼちゃや玉ねぎの甘みと福来みかん、山椒などを組み合わせた味わい。
海の幸は、塩、昆布、イワシと福来みかんの皮を合わせ、冷奴や焼きそば、お好み焼きなどにも取り入れやすくしています。
柚子胡椒は柚子のすっきりとした香りが特徴で、鍋や豚しゃぶ、味噌汁、ふろふき大根など和食との相性を考えた仕上がりです。
スパイスカレーはカレー粉、ターメリック、クミンなどを組み合わせ、唐揚げやポテトフライといった身近な料理にも変化をつけられます。
一味ニンニクは唐辛子とニンニクを合わせ、焼き鳥や焼肉、ペペロンチーノなど、しっかりとした味の料理にも合わせやすいフレーバーです。
5種類それぞれで辛さが異なり、星の数によって辛さが分かるようにしたことも特徴の一つです。
「今日はこの料理だから、この味を使ってみよう」。
そんな選ぶ楽しさまで含めて、家庭で使いやすい商品へと仕上げています。

「海の幸」がグランプリへ。農業から生まれた一瓶が評価された意味
FIVE☆RED FLAVOR’Sの中でも「海の幸」は、2026年3月、第97回ジャパンフードセレクションの食品・飲料部門でグランプリを受賞しました。
アクアポニクスを根幹に育ててきた唐辛子と、地元の福来みかんを使用した七味をベースに、海の幸の素材を組み合わせた商品です。
ここまでを振り返ると、この受賞は一つの調味料だけで突然生まれた結果ではないことが分かります。
水がなくなった経験から循環する仕組みを考え、研究者から学び、人から受け取った唐辛子の種を育て、筑波の福来みかんと出会い、少しずつ加工品として形にしてきた。
その長い流れの先に「海の幸」があります。
農業、養殖、地域資源、加工、販売。
一見すると別々に見えるものを、飯島さんは一つずつつなげてきました。
食材をつくるだけではなく、「どう食べてもらうか」まで考えることで、家庭の料理に取り入れられる商品になる。
そして食べた人が「これはどこでつくられたものだろう」と興味を持てば、筑波八ツ房唐辛子や福来みかん、アクアポニクスという農業そのものを知る入口にもなります。
商品はゴールではありません。
飯島さんが続けてきた農業や地域への思いを、食卓まで届ける役割を持っています。

毎日の料理に取り入れやすいからこそ、食のことを身近に考えられる
エコファーム飯島の商品に共通しているのは、特別な日にだけ楽しむものではなく、普段の食卓に取り入れやすいことです。
冷奴、鍋、味噌汁、焼肉、焼き鳥、焼きそば、ポテトフライ、サラダ。
いつもの料理に少し振りかけたり、調味料として加えたりすることで、香りや辛さの変化を楽しめます。
地域の商品というと「お土産」として完結してしまうものもあります。
しかし、毎日の食事の中で繰り返し使ってもらえれば、そのたびに筑波の唐辛子や福来みかん、そこに関わる生産者の存在を思い出してもらうことができます。
現在は「匠(こだわり)塩山椒~福来みかん風味~」をはじめ、福来みかんを生かした商品や、アクアポニクスと唐辛子について伝える絵本なども展開しています。
食べ物を売って終わるのではなく、その背景にある農業や環境について知ってもらう。
ここにも飯島さんらしい考え方があります。
「医食同源」という言葉を難しいものとして伝えるのではなく、まず毎日の食卓で味わってもらう。
商品は、その考え方に触れる最も身近な入口でもあります。
子どもたちに伝えたいのは、商品ではなく「食と環境のつながり」
エコファーム飯島が見つめているのは、現在の生産や販売だけではありません。
未来を担う子どもたちに、環境の大切さと食の大切さを伝えていくことも、自分たちの役割の一つとして掲げています。
食卓に並ぶものが、どこから生まれ、どのような水や環境、人の手を通して届くのか。
普段の生活では、それを意識する機会は多くありません。
けれどアクアポニクスでは、魚と水と植物が別々の存在ではなく、循環の中でつながっていることを実感できます。
一つの環境に負荷をかければ別の場所に影響し、一方で、それぞれの力を生かせば資源を循環させることもできる。
飯島さんが目指しているのは、この仕組みを研究するだけでなく、食や環境を考えるきっかけとして次の世代へ渡していくことです。
医食同源も、循環農業も、地域の商品づくりも、別々のテーマではありません。
人が健康に生きること。
食を育てられる環境を守ること。
地域に残る農産物を次の世代へ伝えること。
そして、それに関わる人と人をつないでいくこと。
そのすべてを一緒に考えていくことが、エコファーム飯島の目指す未来です。
商品の向こう側にいる人まで伝えたい
七福来やFIVE☆RED FLAVOR’Sを見ると、まず目に入るのは唐辛子や福来みかん、さまざまなフレーバーです。
けれど、その商品が生まれるまでを知ると、見え方は少し変わります。
震災後の水不足。アクアポニクスへの挑戦。研究者との出会い。譲り受けた唐辛子の種。地域に昔からある福来みかん。
限られた環境の中で繰り返してきた試行錯誤。
そして、応援してくれた人たちへの思い。
それらが少しずつ重なり、現在の商品につながっています。
だから、エコファーム飯島を紹介するときに、商品だけを切り取ることはできません。
商品のおいしさや使いやすさはもちろん大切です。
しかし、その奥にいる、「誰が、どんな思いでつくっているのか」まで知ってもらうことで、初めて伝わるものがあります。
飯島さんが長い時間をかけて育ててきたのは、唐辛子だけではありません。
人とのつながりを大切にしながら、食と農業の未来を考え続ける一つの文化です。
会社情報
会社名:エコファーム飯島
代表取締役・CEO:飯島 朗(いいじま あきら)
所在地:〒300-4354 茨城県つくば市国松1014-1
創立:2017年8月1日
主な取り組み:アクアポニクスによる循環農法、チョウザメ養殖、唐辛子等の生産、農産加工品の製造・販売
主な商品:七福来、FIVE☆RED FLAVOR’S、匠(こだわり)塩山椒~福来みかん風味~ほか
商品販売:オンライン販売対応。電話注文および製造所での販売は行っていません。
定休日:不定