創業の原点は震災復興、環境への使命感
株式会社エコテックビルドは2012年の創業以来、環境配慮型建築に特化した施工会社として成長を続けてきた。代表取締役社長の藤井健司氏は、大手ゼネコンで15年のキャリアを積んだ後、東日本大震災の復興支援に携わった経験から独立を決意したという。
「震災復興の現場で、建築が人々の生活基盤であることを改めて実感しました。同時に、従来型の建築が環境に与える負荷の大きさにも気づかされたんです。年間のCO2排出量のうち、建築・不動産業界が占める割合は約40%。この数字を見て、環境に配慮した建築でなければ意味がないと確信しました」と藤井氏は創業の経緯を語る。
同社は設立当初から、省エネルギー性能と再生可能エネルギー活用を両立させた建築物の施工に注力。特にZEB認証取得を目指す商業施設やオフィスビルの案件を中心に実績を積み重ねてきた。創業初年度の売上高は8億円だったが、2023年度には80億円まで成長。年平均成長率は約25%という驚異的な数字を記録している。
独自開発の「エコパネル工法」が競争力の源泉
エコテックビルドの強みは、自社開発したエコパネル工法にある。これは断熱性能を従来比1.8倍に高めた特殊パネルと、施工期間を30%短縮できる独自の組み立て技術を組み合わせた工法だ。
「建築業界では職人不足が深刻化しており、2025年には約130万人の技能労働者が不足すると言われています。私たちのエコパネル工法は、プレファブリケーション技術を活用することで、現場での作業を大幅に削減できます。これにより工期短縮だけでなく、施工品質の均一化も実現しているんです」
実際、同社が2022年に手がけた千葉県の物流施設では、延床面積12,000㎡の建物を従来工法より2ヶ月早い8ヶ月で竣工。さらにZEB Ready認証を取得し、年間のエネルギー消費量を基準値から58%削減することに成功した。この実績が評価され、同クライアントから追加で3棟の発注を獲得している。
また、エコパネルに使用する建材は、再生木材とリサイクル鋼材を主原料としており、製造過程でのCO2排出量も従来比で42%削減を実現。環境性能だけでなく、コスト面でも坪単価を約15%抑えられることから、価格競争力も高いという。
BIM活用で設計から施工まで一貫管理
同社のもう一つの特徴が、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の徹底活用だ。設計段階から3Dモデルを構築し、構造・設備・環境性能をシミュレーション。施工フェーズでも、このデータを活用して進捗管理や品質管理を行っている。
BIMは単なる設計ツールではありません。私たちにとっては、顧客との合意形成、施工の効率化、竣工後のメンテナンス計画まで、建物のライフサイクル全体を管理するプラットフォームなんです。
藤井健司氏
特に環境性能のシミュレーションでは、日射量、風向き、周辺環境を詳細に分析し、最適な太陽光パネル配置や自然換気システムの設計を提案。これにより、ZEB認証取得率は業界平均の38%を大きく上回る82%を達成している。
さらに、BIMデータは竣工後も建物オーナーに引き継がれ、設備更新や改修工事の際に活用される。「建物は建てて終わりではなく、30年、50年と使い続けるもの。そのライフサイクル全体で環境負荷を最小化し、運用コストを抑えることが私たちの使命です」と藤井氏は強調する。
実際、同社が2018年に竣工させた東京都内のオフィスビルでは、5年間の運用データを分析した結果、当初のシミュレーション値と実測値の誤差が3%以内に収まっており、高精度な予測が実証されている。
地方創生と人材育成、次の10年の展望
現在、エコテックビルドは首都圏を中心に年間約40件のプロジェクトを手がけているが、今後は地方都市への展開を加速させる方針だ。
「地方では空き家問題や商業施設の老朽化が深刻化しています。一方で、地域の木材や資源を活用したサステナブルな建築には大きな可能性がある。私たちは2024年から地方拠点を3拠点新設し、地域の工務店や林業事業者と連携したプロジェクトを展開していきます」
すでに長野県では、地元産のカラマツ材を活用したCLT(直交集成板)工法による商業施設の建設プロジェクトが進行中。地域の雇用創出にも貢献しながら、地産地消型の建築モデルを確立する狙いだ。
また、人材育成にも力を入れている。同社では新入社員に対し、1年間のグリーンビルディング研修を実施。環境性能評価の資格取得支援や、海外のサステナブル建築視察プログラムも用意している。現在の従業員数は180名だが、2026年までに300名体制に拡大する計画だ。
「建築業界は変革期を迎えています。2025年には改正建築物省エネ法が完全施行され、すべての新築建物に省エネ基準適合が義務化されます。これは追い風であり、同時に業界全体のレベルアップが求められる転換点です。私たちは技術とノウハウを惜しみなく共有し、業界全体のサステナブル化を牽引していきたい」
藤井氏の視線は、単なる企業成長ではなく、業界全体の未来を見据えている。環境と経済の両立を実現する同社の挑戦は、これからの建築業界のロールモデルとなるだろう。