「観る」から「体験する」へ──スポーツ観戦体験を革新するテクノロジーカンパニーの挑戦
スポーツ・エンタメ

「観る」から「体験する」へ──スポーツ観戦体験を革新するテクノロジーカンパニーの挑戦

スタジアムとデジタルの融合で、スポーツ観戦の未来を創造する

株式会社アスリートビジョン

黒木 隆介
代表取締役社長 黒木 隆介 株式会社アスリートビジョン

AR・VR技術を駆使した次世代観戦システムで、プロスポーツチームとファンをつなぐ。創業5年で提携チーム数50超、ユーザー数80万人を突破した新興企業の戦略とは。

スポーツ観戦体験のDXに挑む理由

編集部
まず、御社の事業内容について教えていただけますか。
黒木社長
当社はスポーツ観戦体験をテクノロジーで革新するプラットフォームを提供している企業です。具体的には、スタジアムやアリーナで観戦するファンに対して、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術を活用した付加価値を提供しています。例えば、スマートフォンをフィールドにかざすと選手の詳細なデータや過去のプレイ動画が表示されたり、自宅からでもスタジアムにいるかのような臨場感でライブ観戦できるシステムなどですね。現在、プロサッカー、バスケットボール、野球など50以上のチームと提携し、約80万人のユーザーに利用いただいています。
編集部
なぜこの事業を始められたのでしょうか。
黒木社長
私自身が熱狂的なサッカーファンなんです。毎週スタジアムに通っていたのですが、ある時「なぜスタジアム観戦は100年前とほとんど変わらないんだろう」と疑問に思ったんですね。テレビ観戦では多角的なカメラアングルや詳細なデータ分析が見られるのに、スタジアムでは肉眼で見るだけ。これは非常にもったいないと感じました。一方で、スタジアムには独特の臨場感や一体感があります。この両者を融合させることができれば、まったく新しい観戦体験が生まれると確信したんです。
編集部
創業当初の苦労はありましたか。
黒木社長
それはもう、想像以上でした(笑)。特に最初のチームとの契約までが大変でしたね。当時は実績もなく、「スポーツ観戦にテクノロジー?」という反応がほとんどでした。スポーツ業界は伝統を重んじる傾向が強く、新しい技術の導入には慎重です。50チーム以上に提案して、最初の契約にこぎつけたのはJ2のクラブでした。そこで半年間、無償でシステムを提供し、ファンの反応データを蓄積したんです。その結果、試合当日の平均滞在時間が1.2倍、グッズ購入率が30%向上するという明確な成果が出ました。これを武器に、徐々に提携チームを増やしていきました。

スタジアム観戦は100年前とほとんど変わらない。テクノロジーで新しい観戦体験を創造したい

── 黒木社長

テクノロジーとスポーツの融合で生まれる価値

編集部
具体的にどのような機能が人気なのでしょうか。
黒木社長
最も人気なのは「プレイヤートラッキング機能」ですね。スマホをフィールドにかざすと、お気に入りの選手の走行距離、スピード、心拍数などがリアルタイムで表示されます。さらに、過去の試合での同じ選手のプレイ動画や、対戦相手との対戦成績なども瞬時に確認できます。若い世代のファンは特に、こうしたデータやストーリーと共に観戦することを好む傾向があります。また、「マルチアングル視聴機能」も好評です。スタジアムの複数のカメラ映像を自分のスマホで切り替えて見られるので、自分だけの特等席を作れるんです。
編集部
VR観戦についても詳しく教えてください。
黒木社長
VR観戦は、自宅にいながらスタジアムの最前列で観戦しているかのような体験を提供するサービスです。360度カメラで撮影した映像をリアルタイムで配信し、VRゴーグルを装着すると、まるでその場にいるかのような臨場感が味わえます。さらに、観客の歓声や選手の息遣いまで立体音響で再現しています。これは特に、遠方に住んでいてスタジアムに行けないファンや、身体的な理由で来場が難しい方々に喜ばれています。月額2,980円のサブスクリプションモデルで提供していますが、現在約12万人の会員がいます。コロナ禍で一気に需要が高まり、その後も順調に増加していますね。
編集部
チーム側にとってのメリットは何でしょうか。
黒木社長
大きく分けて三つあります。一つ目は新規ファンの獲得です。特に若年層はデジタルネイティブで、テクノロジーを活用した体験に価値を感じます。当社のシステムを導入したチームでは、20代のファン層が平均25%増加しています。二つ目は収益の多様化です。デジタルコンテンツの販売、VR観戦の月額課金、データを活用した広告ビジネスなど、新たな収益源が生まれます。三つ目はファンエンゲージメントの向上です。詳細なデータ分析により、ファンの行動パターンや嗜好を把握でき、パーソナライズされたマーケティングが可能になります。結果として、ファンのロイヤリティが向上し、長期的な収益基盤が強化されるんです。
編集部
データ活用の具体例を教えてください。
黒木社長
例えば、あるプロバスケットボールチームでは、当社のシステムで収集したデータを分析した結果、「試合開始30分前に来場するファンはグッズ購入率が高い」ことが分かりました。そこで、早めに来場したファンに対して限定グッズのクーポンをアプリ経由で配信したところ、グッズ売上が40%増加しました。また、別のサッカークラブでは、VR観戦ユーザーの視聴データから「どの選手が人気か」を可視化し、グッズ生産計画に活用しています。これにより、在庫ロスが30%削減されました。データは正しく活用すれば、ファン体験の向上とビジネスの効率化を同時に実現できるんです。

データを正しく活用すれば、ファン体験の向上とビジネスの効率化を同時に実現できる

── 黒木社長

スポーツ・エンタメ業界の未来と展望

編集部
今後の展開について教えてください。
黒木社長
短期的には、提携チーム数を100に拡大し、ユーザー数を150万人まで増やすことを目指しています。現在はプロスポーツが中心ですが、今後は音楽フェスやeスポーツイベントにも展開していきます。実は先月、大手音楽フェスの運営会社と提携契約を結びました。来年夏のフェスで当社のシステムが導入される予定です。音楽ライブでは、アーティストの歌詞や過去のライブ映像をAR表示したり、複数ステージを同時にVR視聴できる機能などを提供します。
編集部
海外展開の計画はありますか。
黒木社長
はい、すでに動き始めています。来年初めにアメリカのシリコンバレーに現地法人を設立する予定です。アメリカはスポーツビジネスの規模が桁違いに大きく、テクノロジーへの受容性も高い。特にNBAやMLBといったメジャーリーグとの提携を目指しています。すでに複数のチームと協議を進めていますよ。また、東南アジア市場も注目しています。インドネシアやタイでは若年人口が多く、スマートフォンの普及率も高い。スポーツの人気も高まっているので、大きな成長機会があると見ています。
編集部
技術的な面での今後の進化はどう考えていますか。
黒木社長
次に注力しているのはAI活用とメタバース対応です。AI技術を使えば、個々のファンの嗜好に合わせて最適なカメラアングルを自動選択したり、「このプレイが見たい」と音声で伝えるだけで該当シーンをすぐに再生したりできます。また、メタバース空間に仮想スタジアムを構築し、世界中のファンが一つの空間で一緒に観戦できる体験も開発中です。アバターで参加して、隣の席の人と会話したり、一緒に応援したりできるんです。技術の進化に終わりはありませんが、常に「ファンにとって本当に価値があるか」という視点を忘れないようにしています。
編集部
最後に、業界全体の未来についてどう見ていますか。
黒木社長
スポーツ・エンタメ業界は、今まさに大きな転換点にあると思います。少子高齢化で国内市場は縮小傾向にあり、従来型のビジネスモデルだけでは限界があります。一方で、テクノロジーを活用すれば、物理的・地理的制約を超えて世界中のファンとつながることができる。新しい収益モデルも生まれています。重要なのは、テクノロジーはあくまで手段であって目的ではないということです。スポーツやエンタメの本質は、人々に感動や興奮を与えること。その本質を大切にしながら、テクノロジーで体験をさらに豊かにする。これが当社の、そしてこれからの業界全体の進むべき道だと信じています。私たちは、その先頭を走り続けたいですね。

スポーツやエンタメの本質は人々に感動を与えること。テクノロジーはその体験をさらに豊かにする手段

── 黒木社長

📝 まとめ
・AR/VR技術でスポーツ観戦体験を革新、創業5年で提携チーム50超・ユーザー80万人を達成
・プレイヤートラッキング機能とVR観戦サービスが人気、若年層ファン獲得と収益多様化を実現
・データ活用でファンエンゲージメント向上、グッズ売上40%増・在庫ロス30%削減などの成果
・音楽フェスやeスポーツへの展開、米国・東南アジアへの海外進出を計画中

🏢企業情報

会社名 株式会社アスリートビジョン
業種 スポーツ・エンタメ
役職 代表取締役社長
代表者 黒木 隆介
← 一覧に戻る

取材をご希望の企業様へ

VERIQ Pressでは、企業の価値を伝えるインタビュー記事の取材を受け付けております。御社の魅力を広く発信しませんか?

お問い合わせはこちら